「3サイズは58年前と同じ」由美かおる73歳が語る「『11PM』出演と石原裕次郎さんからの電話、『同棲時代』ポスターと嵐寛寿郎さん」

由美かおる 撮影/小島愛子

15歳のデビュー以来、映画やテレビ、そして歌に踊りにと、エンターテイメントの第一線を走り続けてきた由美かおる。彼女が出会った数々のスターたちの秘話や出演した名作の舞台裏とともに、半世紀を超える芸能生活の「CHANGE」について、語ってもらった。まずは衝撃のデビュー秘話から――。(全3回/第1回)

『11PM』出演で名優・北大路欣也も「会いたい」

私が所属した『西野バレエ団』の西野皓三先生が読売テレビの『11PM』の制作に関わっていたのがご縁で、番組の中の歌って踊るコーナーに出たんです。
番組放送中から「あの女の子は誰?」「次はいつ出るんだ」などという電話がかかってきて、テレビ局の電話がパンクしそうになったそうです。
このときの映像はいろいろな方がご覧になっていて、最近、北大路欣也さんにお会いしたら「あれは衝撃的でしたね。当時、ボクは読売テレビに電話して、この子に会わせてほしいと言ったんですよ」と懐かしそうに笑っていました。

同じく、『11PM』を見て、すぐに行動を起こしたのがビッグスター、石原裕次郎だった。本人自ら由美かおるに次回作での共演をオファー。それが日活の『夜のバラを消せ』(1966年)だった。

裕次郎さんはカッコいい兄貴という感じ。裕次郎さんとのラブシーンもありましたが、緊張感はなかったですね。

裕次郎さんとのキスシーンに「溺れちゃう」

ただ、海の中でのキスシーンは、背の高い裕次郎さんが相手なので、溺れちゃうんじゃないかと……。もう裕次郎さんに必死でしがみついていました。
それと、標準語を話すのに苦労しましたね。ふだん関西弁の私は、どうしても早口になっちゃうんです。
でも、裕次郎さんが「テンポがあっていいよ」と励ましてくださいました。
撮影中は、ずっと裕次郎さんのご自宅に泊めていただきました。
奥様のマコさん(石原まき子=芸名・北原三枝)が、“親元を離れ、初めての映画に出るんだから、そのほうがいいでしょう”と言ってくださったんです。
撮影所に行くときは、いつも裕次郎さんと一緒。ドアが上に開くタイプのスポーツカーに乗せてもらいました。今思えば、裕次郎さんと過ごした時間は夢のようです。

その後は多忙を極め、16歳のときには正月放送のテレビ番組16本に出演。当時の最多出演記録を打ち立てた。一方で話題の映画にも次々と出演した。

車での移動中に睡眠をとるような生活が続きましたが、当時はまだ十代。全然、平気でした。
この頃は海外の仕事も多く、好奇心旺盛なので楽しかったですね。たとえば、橋幸夫さんの妹役を演じた映画『シンガポールの夜は更けて』では現地に行っての撮影だったし、テレビの『ヤング720』(TBS系)の司会をしたときは、取材でイタリアにも行きました。

ヴェネツィア音楽祭で熱唱「イタリア永住の誘い」

その最中、スタッフとレストランで食事をしていたらステキな男性が来て、「チャオ、バンビーナ」なんて笑顔で話しかけてきたんです。それがイタリアの大手レコード会社の社長さん。
私に一目惚れしちゃったみたいな様子で「あなたは日本の女優ですか。歌手ですか。ぜひ、ヴェネツィア音楽祭に出てください」と言うわけです。帰国後、西野先生に相談したら「それはいい話だね」ということになり、イタリア語のレッスンも受けてレコーディングに臨みました。
その後、ヴェネツィア音楽祭で歌ったら、反響が大きくて、ブラジルやチリの音楽祭にも招待されました。レコード会社の社長さんからは「ヨーロッパで大々的に売り出したいから、イタリアに永住してくれないか」と誘われました。でも、日本でのレギュラーがたくさんあったし、結局、お断りしました。もし、その申し出を受けていたら、違う人生が待っていたかもしれませんね。

22歳のとき、大きな転機が訪れる。上村一夫の劇画を原作とした映画『同棲時代』に主演したのだ。大胆なベッドシーンに挑み、アイドルから本格的な女優へと脱皮した由美の、日本人離れした美しい肢体をとらえた宣伝ポスターも大きな話題となった。

映画の舞台あいさつに行って、ビックリしました。劇場の周りは渦を巻くように行列ができているし、館内はドアが閉まらないくらい人でギッシリ。「同棲」という言葉が流行して、映画は社会現象にもなりました。

『同棲時代』で本格的な女優へと脱皮「無我夢中でした」

撮影で一番大変だったのは、ベッドシーン。初めてだから、分からないでいると、山根成之監督が「はい、こっちを向いて。次はこっち。1、2、3、4」とバレエのカウントをとるように演技をつけてくれました。私は踊りをする感覚で、無我夢中で演じました。
映画ポスターは今見ても衝撃的。後ろ姿とはいえ、何もつけていない状態での撮影は抵抗があって、ずいぶん悩みました。でも山根監督がメルヘンタッチに美しく撮ってくれるというので、思い切ってお任せしました。
後で聞いたんですが、俳優の嵐寛寿郎さんが私のファンで、落語家の林家木久蔵(現・木久扇)さんと2人で自転車に乗って、ポスターをはがしてまわられたとか。それも私のヌードを、むやみやたらに人に見せてはいけないというのが理由だったそうで、そこまで思っていただけたのですから、とても光栄です。

ゆみ・かおる 1950年11月12日、京都府生まれ。中学生のときに、西野バレエ団に入団し、深夜ワイドショー『11PM』(日本テレビ系)に、西野皓三氏が企画・構成・振付をした歌と踊りで出演すると大ブレイク。世間の注目を集め、66年に石原裕次郎の相手役として映画『夜のバラを消せ』で女優デビュー。歌手としても67年のデビュー以来、ヴェネツィア国際音楽祭など、海外の音楽祭で入賞を果たすなど世界の舞台でも活躍する。多くの映画やドラマ、CMなどに出演し、代表作のドラマ『水戸黄門』(TBS系)で演じた女忍者・かげろうお銀の入浴シーンは、同ドラマの看板になった。T157-B86W58H86のスリーサイズはデビュー当時から変わらず。由美かおるが講師を務める「ブリージング(呼吸法)レッスン」などの最新情報は、https://yumikaoru.com/でチェック。CDアルバム『Jewel Box』も発売中。

© 株式会社双葉社