【山脇明子のLA通信】指揮官の信頼を得て1年間で確実に成長…ジェイコブス晶のカレッジライフ

今季、全米大学体育協会1部(以降DⅠ)のハワイ大学でカレッジキャリアをスタートさせたジェイコブス晶のシーズンが、3月15日幕を閉じた。34試合中28試合の出場で、1試合平均2.4得点1リバウンド。シーズン序盤は出場機会がほとんどなかったが、中盤から徐々に持ち味を発揮。第3シードで準々決勝から出場したビッグウエスト・カンファレンス・トーナメントでは、最初の試合となるカリフォルニア州立大学ノースリッジ校戦で、8分12秒の出場で5得点すると、準決勝のカリフォルニア大学デイビス校戦では、12分の出場で自己最多タイの8得点4リバウンド。大差から試合終了間近に1点差まで追い上げたチームに貢献した。ハワイ大は健闘むなしく敗戦したが、ジェイコブスは、勝てば決勝進出、負ければ終わりの大事な1戦でチームに勢いをつけるビッグシュートを決めるなど成長の跡を見せた。

ジェイコブスが、エラン・ガノットヘッドコーチから信用を得はじめたシーズン中盤に、大学バスケやキャンパスライフについて聞いた。

インタビュー・文=山脇明子

◆「日本人としてプレーしているので登録は『晶』にしました」

――ガノットHCが、ジェイコブス選手の練習での向上ぶりを見て、試合で起用していくことに決めたと言っていました。最近プレー時間が伸びていることをどのように思いますか。
ジェイコブス コーチが僕のプレーを信じて試合に出してくれることは、とてもうれしいことです。このチームはバスケの才能がある選手が揃っています。誰もが戦力としてプレーできるので、毎試合、みんなが出る準備をしておくように言われています。これからも、いつ自分の名前が呼ばれてもしっかりプレーできるように頑張ります。

――コーチから、どういうことをやってほしいと言われているのですか?
ジェイコブス シュートはアグレッシブに行って、あとはインサイドでの強さを見せるということです。相手の方が、体が大きくて強くても、負けないぐらいの気迫を見せていけと言われています。

――ガノットHCは、あなたの練習熱心な面を褒めていましたよ。エキストラワークもして、よく頑張っていると言っていました。
ジェイコブス 僕はバスケが大好きなので、エキストラの練習はできるときはいつでもやりたいし、いつでも出られるように準備をしておきたいと思っています。コーチから僕にはできると思ってもらっていることをちゃんとできるようにしたい。コートに入ってすぐにシュートを決められるように、練習できる機会があるときは、いつもやっています。

――試合によっては、プレー時間が少ないときもありますが、そういうときは悔しいものなのですか?
ジェイコブス もちろん悔しい思いもありますけど、周りのチームメイトもみんなすごく上手いので、プレー時間が少なくても、自分ができる限りのことをやろうと思っています。自分の前に他の選手が出ても、出られる準備をしておくことに変わりありません。自分の中ではチームが一番なので、ベンチにいたとしても100パーセント出して応援して、コートに出たら自分のマックスを出してチームのために頑張りたい。何であっても一生懸命やりたいです。

――先輩たちは、どんなふうにジェイコブス選手に接してくれているのですか?
ジェイコブス 同じポジションのジャスティン・マッコイ(グラジュエイト・スチューデント)やハリー(ロリアレフ:2年生)とは、よく話しています。ジャスティンは大学の経験が豊富だし、ハリーも1年上なので、いろいろ教えてくれます。僕たち3人、プレーが似ているので一緒にフィルムを見たり、「こういうところは、こういう読み方をする方がいい」とか、すごく教えてくれるし、僕が出たときはベンチから声をかけてくれたり、すごく感謝しています。

――昨年夏にインタビューさせていただいたときに日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチから、「フィジカルをもっと強くするように言われた」と言っていましたが、大学に入って体は強くなりましたか?
ジェイコブス 今、パワーフォードをやることが多いんですけど、体が強い選手がすごく多くて。昨年の夏は結構インサイドやられたりしましたけど、そのときより強くなっていると思います。筋トレの重量も上がりましたし、体重も増えています。今は97~98キロぐらい。日本代表のときより3~4キロ増えました。

――U19でチームメートだったロロ・ルドルフ選手が、同じカンファレンスのカリフォルニア州立大学フラトン校に進学することが決まりましたね。
ジェイコブス 彼がコミットしたときに連絡しました。同じカンファレンスでできることはうれしいですし、すごく才能がある選手なので、これからが楽しみです。DⅠの大学に来る選手がこれからも増えていってほしいです。

「DⅠの大学に来る選手がこれからも増えていってほしい」とジェイコブス [写真]=University of Hawaii Athletics

――ハワイ大では「Akira Jacobs」で登録していますが、アメリカの高校でプレーしていたときから「晶」を使っていたのですか?
ジェイコブス その時は、(ファーストネームの)テイジョンです。

――なぜハワイ大では「晶」にしようと思ったのですか?
ジェイコブス アメリカに住んでいるときは「テイジョン」、日本にいるときは「晶」と呼ばれていました。ビー・コルセアーズに入ったときは、日本にいるときに呼ばれている「晶」でいいかなと思ってそうしました。今も家族の中では「テイジョン」と呼ばれたりしますけど、日本人ということで、ハワイ大では「晶」にしました。

――ハワイ大ではカリフォルニアへの遠征が多く、ロサンゼルスに住んでいたジェイコブス選手にとっては、懐かしい思いがあるのではないですか?
ジェイコブス (取材日に試合をした)ここロングビーチに来たこともありますし、以前ここに来たときには祖父にも会いに行きました。バスで前に住んでいた家の近所を通ったりして、カリフォルニアに来るたび、「ああ、ここ昔来たな」とか思いながら、風景を見ています。たまに現実が信じられないときがあります。(新型コロナウイルスの影響で日本に帰国した)2020年から状況が一変しました。2023年だけでもすごくいろいろなことがありました。あっという間に時間が過ぎましたが、いろんなことを経験して今はDⅠでプレーしています。(DⅠは自分には無理だと思っていた)アメリカの高校時代を過ごした場所に戻り、振り返ると、自分でも頑張ったと思いますし、もっと頑張らなきゃいけないと思います。

――大学生活どうですか?
ジェイコブス 勉強とバスケのバランスを取るのが難しいです。僕は1年NBAグローバルアカデミーにいて、学校に行ってない時期があったので、慣れるのに余計に時間がかかりました。ハワイ大は、2週間に1回は飛行機に乗って、カリフォルニアでの試合に行きます。約1週間授業に出られないことがあり、アウェイの間も宿題をする時間を見つけなければならず、そこが難しいです。

――そんな中でバスケをしているわけですが、バスケの方は大分慣れてきた感じはありますか?
ジェイコブス 慣れてきたとは思いますが、完璧には全然近づいていません。でも最初のときと比べれば、少し自信がついてきました。成長できるところがまだまだいっぱいあるので、しっかりやっていきたいです。

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