曽万布、谷畠、無悪…福井県の難読地名いくつ読める? なぜ難しい読み方に…日本地名研究所長が解説

福井県内難読地名の一例
難読地名が生まれた理由を話す金田久璋さん=福井県美浜町内

 これって何て読むんだろう…。地元の人にはなじみがあっても、住民以外には予想外の読み方をしたり読めなかったりする「難読地名」。福井県内にも曽万布(福井市)や谷畠(あわら市)、無悪(若狭町)などさまざまある。専門家によると、難しい読み方になった理由は諸説あるが、元々存在した読みに後から漢字を当てはめたことが要因の一つになっているようだ。文中に出てくる地名、いくつ読めますか? 答えは記事の最後に。

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▽欠かせない知識

 場所を覚えたり人に説明したりするために「土地の呼称は生活に欠かせない知識。人類が生まれて以降ずっと存在してきたはずだ」と話すのは、日本地名研究所(神奈川県川崎市)の所長を務める民俗学者の金田久璋さん(80)=福井県美浜町。丘になっているなどの地形的な特徴や、近くに海や山、川があるといった土地周辺の自然環境から名付けられることが多く「環境が似ていることを理由に、同じ地名が他の場所でみられることがある」と話す。

 難読地名とされる中にも、地形や自然環境の特徴を由来とするものは多い。千合谷(越前市)は多くの谷が存在する場所であることが元とされ、尾根筋が緩やかだったことが由来の尾緩(池田町)や、二つの川の間に位置することが元になった河間(あわら市)などもこれにあたる。

▽アイデンティティー

 難しい読み方になった理由の一つとして「もともとあった読み方(発音)に漢字を当てはめたことが挙げられる」と金田さん。近世以降になり地名を表記するようになると、知識をもった人や神職の人らが史実や言い伝えに基づいて「いろいろな漢字を当てはめて決めていった」と推測する。

 とはいえ、難読地名には中挾(大野市)や公文名(敦賀市)のように、中世まで存在した「荘園」の名が残ったと考えられるものも存在。生玉や塩竈(ともに小浜市)は有名神社から名付けたとされ、久々子(美浜町)は久々子湖に飛来した白鳥の古名である「クグ」「クグイ」に由来するとされている。

 加えて、鋳物師職人が存在した鋳物師(敦賀市、南越前町)や轆轤師集団が村をつくった六呂師(越前町)など職業を由来とするものや、良質のゴボウが生産されていた午房ケ平(越前町)など産物が由来になったものもある。

 由来は多岐にわたる上、良い意味の漢字2文字を使う「好字二字令」なども影響したと考えられ「文献に残っておらず、謎に包まれたままのものも多いのが実情」と金田さん。それでも「地名は日本人にとってのアイデンティティーだ」と指摘し「由来を知れば地域愛が深まる。地名に関心をもってほしい」と話していた。

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 地名の読み方や由来は、角川日本地名大辞典 福井県(角川書店刊)を参考にした。地名は別の読み方をする場合があり、由来については諸説ある。

文中の地名の読み方

曽万布(そんぼ) 谷畠(たんばく) 無悪(さかなし) 千合谷(せんごうだに) 尾緩(おだるみ) 河間(こうま) 中挾(なかばさみ) 公文名(くもんみょう) 生玉(いくだま) 塩竈(しおがま) 久々子(くぐし) 鋳物師(いもじ=敦賀市、いものし=南越前町) 六呂師(ろくろし) 午房ケ平(ごぼうがだいら)

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