フラッド×金属バットによる“日本で一番ワケの分からない夜” 『KINZOKU Bat NIGHT』オフィシャルレポート

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3月8日(金) に東京キネマ倶楽部で、a flood of circleと金属バットによるツーマンライブ『KINZOKU Bat NIGHT at 東京キネマ倶楽部』が開催された。これまでにも2021年に京都は磔磔、2022年に大阪はなんばHatchでも開催されてきたが、今回はニッポン放送プロデュースで遂に東京でも初開催された。

開演時間になり、舞台下手にある階段と繋がった金のカーテンからfloodのメンバー4人が現れて、ゆっくりと階段を降りて登場する。何気ない場面だが、それだけで絵になってしまう。お茶割りを持つ佐々木亮介は少し呑み、いつもの「おはようございます。a flood of circleです」という枕から、もちろん1曲目はイベントタイトル由来でもある「KINZOKU Bat」からスタート。緩やかに入りながらも、「ぶちのめしてくれ~!!」という佐々木のシャウトはインパクトしかない。

a flood of circle

続く「ミッドナイト・クローラー」で一気にボルテージが上がり、拳を突き上げる観客たち。「ハイテンションソング」は、その名の通り、ハイテンションにならざるをえないソング! 予想以上に序盤からぶちあげていく。

「KINZOKU Bat NIGHT、謎のイベント。別に意味は無いイベント」

佐々木は、そう吐き捨てるが、金属バットが東京では単独公演をやる気がない事、東京のイカれたラジオ局に誘われた事など、節を付けながら丁寧に明かす。そこから金属バットがMVに出演した事が話題にもなった「如何様師のバラード」では、佐々木が観客フロアに降りて、ただただ突き進みながら歌っていく。観客たちが佐々木のマイクケーブルを必死に両手で持ち上げながら見守る姿は、全員でライブを支えている様にも見えて胸が熱くなる。

歌い終わり、「紹介します! 金属バット!」と佐々木は言って下手袖にはける。floodのメンバーがはけ終わらぬタイミングくらいで、舞台下手にある階段と繋がった金のカーテンから金属バットふたりが現れて、ゆっくりと階段を降りて登場。

小林圭輔は「落ち着きましょ!」、友保隼平は「ちょっとやりにくいな!」と恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる。生配信されているから、パッと思った事を言えないと言いつつも、まぁまぁギリギリの言葉で攻めてくるのも堪らない。

金属バット

「如何様師のバラード」MVでの演技が棒だった事などに触れて、怖い話の漫才へ。廃病院・廃工場・メガドライブなどのキラーワードと共に、ケミカルホラー・納税ホラー・サバイバルホラーなど繰り広げられるが、2022年のHatchをデジャブさせる小林のネタ飛ばしもあり、より盛り上がる。これぞ生の舞台。漫才の終盤になって気付いたが、友保がジャケットの下に、「如何様師のバラード」MVをアメコミ化したイベントTシャツを着ていた。さり気ないコーディネートが何ともニクい……。

先程と同じくふたりは下手袖にはけて、floodの4人が舞台下手のカーテンからゆっくりと登場。

「やりにくいな」とつぶやきお茶割りをあおる佐々木。

「ロックとお笑いの融合なんて1mmも考えていない。どうでもよくて。(金属バットを)好きなだけで。早めに唾をつけていたら色んなバンドと浮気していて。こっちが一途なだけで。a flood of circleを捨てる様な事があれば、みなさん言って下さい、“くたばれ!”と!」

で、鳴らされたのが「くたばれマイダーリン」。激しくて……、格好良くて……。これを融合と言わずして、何と言うと想うし、言うまでも無く巷に溢れたロックとお笑いの融合なんていう言葉で収まりきらないのもわかっているし、兎にも角にもa flood of circleと金属バットという存在それぞれが威風堂々と聳え立っている。

「お笑いのファンじゃない、金属バットのファン。『~NIGHT』みたいなビッチみたいなとこは無い」

そう断言した佐々木。金属バットが好きだから連絡しただけであり、このイベントを定期的に考えてもいないという。今回もラジオ局の担当者による諦めない熱望で開催されたとも話す。照れ隠しなのか、金属バットは営業のひとつにしか考えてないはずと言っていたが、そんな訳がない事もわかりきっている。だって、3度も既に開催されているのだから。

何が最高かって、熱い話をした後に、当たり前ではあるが熱いライブをぶちかましてくれる事。それも新曲が一番格好良いという事を「冬の終わり、マウンテンデュー、一瞬について」で証明してくれる。「もう1回紹介します! 金属バット!」と佐々木は言って、下手袖にはけて、金属バットの2人が舞台下手にある階段と繋がった金のカーテンから現れて、ゆっくりと階段を降りて登場。このシチュエーションは何度観ても痺れる。

「愛重かったなぁ(笑)。一個の営業として来てないねんけどな。愛足りへんかったかなぁ」と友保が言えば、小林は「“あなたが一番です”と言うわと」と返し、友保は「“言わせんな馬鹿!”と言うわ」と締める。2021年の磔磔から観ているが、明らかに2組の関係性が強固になっている。

そこから大雨の日の田んぼの話から海に流されて人魚に助けられた漫才へ。魚たちとの海のゲーム・南港ニュートラム・ATCといったキラーワードから、「最後のネタになります」と次のネタへいこうとする。観客から「え~!?」と声があがるも、畳みかけるかの様に、大阪交通安全カルタという超キラーワードが炸裂するネタへ。何度も書いている素敵なシチュエーションを経て、floodこの日3度目のライブ。

金属バットのネタが次の新たな段階へといっていると話して、新曲「キャンドルソング」へ。とにかく金属バットの漫才からライブへいく流れが無駄一切無く削ぎ落されて、その上で研ぎ澄まされている。

「好きなものを集めているんですよ。金属バットとか、奈良美智さんとか」

何も難しい言葉はいらない、結局やりたい事をやり貫いているだけ。我がままだと佐々木は言ったが、その我がままは何も間違えてないし、立派な生き様である。

「8月12日日比谷野外音楽堂に全てを賭けますから来てください」

そして、「俺の夢を叶えるやつは俺しかいない 俺は行く いつもの道を Rock ‘n’ Roll」と歌い出して、「月夜の道を俺が行く」へ。凄いスピードで駆け抜けていくロックンロール……。ラストナンバーは「本気で生きているのなら」……、これ以上、何を言う事があるだろうが……。無論、アンコールの拍手は鳴りやまない。そして、再登場したのは、まさかの金属バット!

友保はお茶割りをぐいっと呑み、アンプの上へ置く。小林も「俺らでいいんか?!」と困惑している。CMをネタにした短めの漫才をコンパクトながらも、とてつもないインパクトを与えて披露していく。金属バットが袖にはけて、floodが再登場して、佐々木は今日万が一アンコールがあったら、半分は金属バットだと考えていたので、短いネタがあるかを確認していたという。

「“じゃあ、また、いつかやります”とか、そういう事は言わないです。あるかわからないし。ただ、まぁ、俺がフラれなければ! 死ななければ、みんなが」 そう言って歌われた「ゴールド・ディガーズ」は決意表明の様だった。アンコールラストナンバーは、オープニングナンバーと同じく「KINZOKU Bat」。同じ曲なのに、最初と最後に聴くと、聴こえ方が違う。熱情の込め具合は同じだが、飛び散り方が違うというか……。

「ハートがばらばらに散らばっても やるしかないんだから ぶちのめしていけ ぶちのめしていけ」

この歌詞が頭にこびりついて離れない。やるかやられるかという凄みありすぎる対バンを魅せつけられた……。

「金属バットに東京で単独公演をやれって、みんなで言ってもいいんじゃない?」

最後まで佐々木はクールで、そう言い残して去っていった。観た人間全て余韻が冷めない夜……。

取材・文:鈴木淳史 Photo:Viola Kam (V'z Twinkle)

<配信情報>
『KINZOKU Bat NIGHT at 東京キネマ俱楽部』

アーカイブ期間:3月24日(日) 23:59まで
販売期間:3月24日(日) 21:00まで
https://w.pia.jp/t/kbn/

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