デニー・ハムリンがベテランの功。激烈なタイヤ摩耗による消耗戦を制し1-2達成/NASCAR第5戦

 近年は“春のダートオーバル”として定着していたブリストル・モーター・スピードウェイにて開催された、2024年のNASCARカップシリーズ第5戦『フードシティ500』は、舗装路面に回帰した0.533マイルのショートオーバルによる予想外のタイヤ摩耗とコード損傷が深刻化する“苛烈な消耗戦”の様相に。

 そんななかコンパウンドと燃料消費のマネジメントに長けるベテラン勢が強さを見せ、陣営内のマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)との勝負を制したデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が、昨秋のナイトレースに続く同地連勝、キャリア通算52勝目の今季初優勝を飾っている。

 引き続きショートトラックとロードコース用の新しい空力パッケージを適用したブリストルの週末には、次週に迫ったロードコースイベントの第6戦『エコーパーク・オートモーティブ・グランプリ』にて、自身2度目のカップシリーズ出場を控える小林可夢偉も23XIレーシングに帯同。現地で新型トヨタ・カムリXSEやNext-Gen規定の新ルールの情報を収集する機会としていた。

 そんななか、土曜フリープラクティスから最速発進としたライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がそのまま予選も制し、自身10回目のポールウイナーに輝くと、そこまでの走行セッションで新たな問題が顕在化。舗装版のブリストルで実績あるタイヤを持ち込んだグッドイヤーだったが、どの車両でも異常な摩耗に苦しめられ、路面へのラバーインがまったく進まないという状況に陥った。

「昨年ここでテストを行ったのは、より多くのタイヤ摩耗を引き起こすパッケージを開発するという目的で、それがNASCARとチームからの要望だった」と語るのは、ワンメイクタイヤの開発と供給を担うグッドイヤーのレーシングディレクターを務めるグレッグ・スタッカーだ。

「テストは非常に成功し、昨秋も問題なくレースができた。摩耗の差によるポジションチェンジが生まれ、誰がもっともタイヤ管理が巧いかが決まる。昨秋(のレース)は良い仕上がりだと感じたが、今は何かが異なる。これは明らかに過激だ」

 ラップを重ねたトレッド面はカーカスやベルトが露出するほど摩耗し、コンクリートに塗り込まれなかったラバーはタイヤカスとなってオーバルの上段を占拠する事態に。NASCARの運営側も過去数年でハイラインが優勢になった事実も鑑み、イベント前と日曜の朝にもオーバルのボトム側に樹脂を塗布する作業を進めたが、それでもグッドイヤーは決勝のステージ2を前に、チームに追加のタイヤセットをリリースすることを許可する状況となった。

土曜のフリープラクティスから最速発進としたライアン・ブレイニー(Team Penske/フォード・マスタング)がそのまま予選も制し、自身10回目のポールウイナーに輝く
舗装路面に回帰した0.533マイルのショートオーバルによる予想外のタイヤ摩耗とコード損傷が深刻化する”苛烈な消耗戦”の様相に
グッドイヤーは決勝のステージ2を前に、チームに追加のタイヤセットをリリースすることを許可する状況となった

■トヨタ勢が合計500周の内、383周をリード

 開幕以降の4戦とは異なり、スタート直後からブレイニー以下、2022年王者ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)らを含む4台以上の新型フォード・マスタング“ダークホース”艦隊が隊列を率いたが、その後はジリジリとカムリXSEに主導権が移る展開に。

 序盤首位に浮上したタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)こそ、背後からのプッシュで敢えなくスピンを喫したが、トヨタ陣営JGRの所属ドライバーは合計500周中383周を制覇し、タイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が137周、トゥルーエクスJr.が54周、そして前戦勝者クリストファー・ベルが29周をリードしていく。

 グラベルも含め同地通算8勝のマイスターであるカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)も右リヤのゴムを失い、ハムリンもトップレーンに押し込まれた際、マーブルの上でコントロールを失ってウォールにヒットするなど、序盤から混沌とした状況に陥るなか、アンダーコーション決着となったステージ1でギブスが初勝利を決めると、そのままステージ2も制覇してみせる。

 ファイナルステージも300周目以降は、事実上のJGRによる優勝争いとなり、483周目のトラフィックで一時は首位を奪ったトゥルーエクスJr.の19号車カムリだったが、続くラップではバックマーカーの処理も絡めたハムリンの11号車カムリが逆襲に成功。カップシリーズのショートトラック記録となる54回のリードチェンジを経た波乱のレースで、ブリストル通算4勝目を手にした。

「今日のドライブは、ここミッドアトランティックで育ち、サウスボストンやマーティンズヴィルのショートトラックでやってきたことを総動員した」と語ったハムリン。

「タイヤマネジメントレースになると、僕らには本当のチャンスが巡ってくる。気に入ったよ。同じくベテランであるマーティン(・トゥルーエクスJr.)もそのやり方を知っていた。僕らには素晴らしいクルマ、素晴らしいチームがあり、ピットクルーはレースを通じて最高の仕事をしてくれた。彼らについてはいくら言っても足りないが……あぁ、ブリストルで勝てて本当に気持ちいい」

 併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第4戦『ウェザー・ガード・トラック・レース』は、日曜のカップで不完全燃焼となるカイル・ブッシュ(スパイア・モータースポーツ/シボレー・シルバラードRST)を抑え切り、クリスチャン・エッケス(マカナリー・ヒルゲマン・レーシング/シボレー・シルバラードRST)がポールポジション獲得の速さを今季初勝利に繋げている。

ステージ1はアンダーコーションながら、続くステージ2も制覇したタイ・ギブス(Joe Gibbs Racing/トヨタ・カムリXSE)
同地通算8勝のカイル・ブッシュ(Richard Childress Racing/シボレー・カマロ)は苦しみ、ハムリンは勝利と対照的な結果に
NASCAR CRAFTSMAN Truck Series第4戦は、そのブッシュを破ったクリスチャン・エッケス(McAnally-Hilgemann Racing/シボレー・シルバラードRST)が勝利した

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