年金「月14万円」…「手取り30万円」労働者の「残酷すぎる老後」

(※写真はイメージです/PIXTA)

「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められていますか? 『2022年度「生活保障に関する調査」』より、日本人の生活設計について見ていきます。

将来のお金準備できてる?…「いいえ」半数超の衝撃

「人生100年時代」「老後破産」「老後資金問題」……少子高齢化に伴い浮き彫りになる「日本人の老後問題」。公益財団法人生命保険文化センターは、『2022年度「生活保障に関する調査」』で日本人の貯蓄状況について調べている。

将来のためのお金、実際のところ貯められているのだろうか?

同調査の「あなたは、ご自身やご家族の将来をどのようにしたいか、そのための経済的な準備をどうしたらよいかといった、具体的な生活設計を立てていますか」との問いに対し、「生活設計あり」と回答した人は39.9%、「生活設計なし」とした人は51.5%となっている。

その内訳を性・年齢別を見ていくと、男性で「生活設計あり」と答えたボリュームゾーンは40代で46.7%、一方で「生活設計なし」が最も多かったのは20代で59.6%であった。女性で「生活設計あり」と答えたボリュームゾーンは50代で42.5%。一方で「生活設計なし」が最も多かったのは20代で60.0%となった。

また同調査を性・世帯年収別に見ていくと、「生活設計あり」ともっとも答えたのは男女ともに年収1,000万円以上の世帯であり、「生活設計なし」が多かったのは年収300万円未満の世帯であった。

ちなみに国税庁の『令和4年分 民間給与実態統計調査』によると、給与所得者のなかで正規社員の平均給与は523万円である。年収500万円~700万円未満の層で「生活設計あり」と答えたのは男性46.4%、女性49.3%。平均年収の層ですら、生活設計をしているのは半数以下という厳しい現実が見て取れる。

同調査では「生活設計あり」と回答した人に対し、「何年先までの生活設計を考えているのか」アンケートをおこなっている。

結果「5年以下」14.1%、「6~10年」34.8%、「11~15年」8.1%、「16~20年」21.1%、「20年超」11.6%、「わからない」10.2%と、「6~10年」が最多となった。

また男女ともに、20代の生活設計期間で最も多いのは「5年以下」、30代は「20年超」、40代・50代・60代は「6~10年」となっている。

「経済的余裕がない」…老後に必要な資金のことなんて

同調査では「生活設計なし」と回答した人にその理由を聞いている。もっとも多いのは「将来の見通しを立て難いから」25.8%。そして「経済的余裕がないから」23.1%、「なんとか暮らしていけるから」22.8%、「将来より現在の生活が大切だから」15.9%と続いている。

なお1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は「年収458万円」。年収458万円だと毎月の給与は38万円、手取りは30万円ほどになる。単身者が節約に励み、ようやく月数万円の貯金ができるといったところか。子どもを抱える世帯などには貯蓄が難しいことは容易にうかがえる。「将来の見通しを立て難いから」「経済的余裕がないから」が約半数となるのも何ら不思議な話ではない。

では老後は年金暮らしで…と考えたいところだが、厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)受給者は3,598万人で、受給者平均年金は月額約14万4,982円。「年金+α」での生活が求められていることは間違いない。手取り30万円で貯金をせずに老後に至ったら、極めて厳しい生活が待っている。

「自助努力」。ここ数年、何度聞いてきた言葉だろうか。人生100年時代と謳われる今、投資による資産形成にも注目が高まっているが、それは余裕資金があってのこと。「貯める」ことすら難しい日本社会の残酷な現実を、直視していく必要がある。

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