『Eye Love You』ミン・ハナが描いた絵本の正体 すべてを知った侑里がテオに別れを告げる

〈もう一度さ 声を聴かせてよ〉

これまでいくつもの心ときめくシーンで流れてきた主題歌の「幾億光年」が、こんなに切なく響くことになるとは。このまま愛し合う2人が一緒にいれば、やがて少年が夜空の星になってしまうという絵本の結末。心の声が聴こえる少女に星になった少年は「愛しています」と叫び続けるが、その声はもう少女には届かない。どんなに「もう一度、聴かせて」と願っても……。

火曜ドラマ『Eye Love You』(TBS系)第9話では、ついに侑里(二階堂ふみ)とテオ(チェ・ジョンヒョプ)に待ち受ける運命について明かされた。ミン・ハナ(玄理)が描いた絵本は、侑里と同じくテレパスである彼女と亡くなった恋人に起こった実話だった。そして侑里とテオが同じ運命をたどることにないように、ハナ、そして飯山教授(杉本哲太)は2人を別れさせようとしていたことが判明する。

しかしテオは自分の身に何が起こるのか、その結末を覚悟しながらも、侑里を全力で愛することを決めていた。そこで、ハナは侑里に向けてアプローチを開始。しかし、タイミング悪く侑里が不在だったことから、絵本は花岡(中川大志)に託されることになった。これまでひた隠しにしてきたテレパスの秘密も花岡に知られ、そして絵本の悲しい結末を突きつけられた侑里。ともすれば、取り乱してもおかしくないところだが、「だからテオくんは、いつだってただ私との今を大切にしてくれていたんだ」と現実に向き合う姿が印象的だった。

侑里がこれだけ凛としていられたのは、間違いなくテオからもらったたくさんの愛があればこそだろう。テレパスの能力を明かした人から怖がられたり、知りたくない本音に傷ついたりした結果、心を閉ざしながら生きてきた侑里。そんな彼女に人を愛する幸せと喜びを再び教えてくれたのがテオだった。主題歌の〈寄り添った日々 生きてる意味 くれたのは君なんだよ〉という歌詞にもつながって、2人で過ごした時間が輝きを増す。

人は誰かを愛し愛されることで、生きている意味を見出すことができるもの。だからこそ、テオが恐ろしい運命が待ち受けたとしても、侑里を愛し続けようと覚悟したのも納得だ。もともと人の命には限りがあるもの。次の瞬間に心臓の音が止まってしまうことだって、ありえないわけではない。こんなにも愛しい侑里への気持ちを諦めてまで生きる人生になんの意味があるのか、そう考えたのではないだろうか。

だが一方で、それはある意味で自分のエゴだということにも気づいていたようにも見えた。きっとテオが覚悟を決めてからも、最愛の恋人を失って悲しみと共に生き続けるハナの姿が何度もよぎったはず。自分が愛してしまったから命を落とすことになってしまった、と悔やみ続ける姿を。愛ゆえに自分が命を落とすことになるのは構わない。しかしその結果、侑里を苦しませることになるのはどうにか避けたい。だからこそ、テオは侑里の秘密を知らないフリをして、今を精一杯楽しく過ごそうとしたのではないか。来たるべきそのときまでに、絵本の結末とは違う未来を手繰り寄せる方法を探しながら。

しかし、そんなテオの願いを運命は待ってくれなかった。すべてを知った侑里は、愛するからこそテオに別れを告げる。それが、侑里もしたい選択ではないことはテオも十分にわかっていた。だが、どうしても離れたくないテオが目を赤くしながら、「가지 마(カジマ)」としぼり出した言葉。そして唇を噛み、必死に呼吸を整え、この理不尽な運命をなんとか飲み込もうとする表情に胸を締め付けられた。とっさにテオの部屋から飛び出した侑里も「カジマ」の意味が「行かないで」だと知ると、たまらず涙が溢れ出す。それでも心の中で“テオを守るための決断だ”と思えばこそ、歩き出すことができたのだろう。そのうしろ姿が映ったタイミングで〈思い出を抱いて 生きて〉という歌詞が重なったのも、偶然ではないように思えた。

テオからもらったたくさんの愛は、たとえ恋人同士ではなくなったとしても侑里の心を温め続けてくれるだけのエナジーになるはず。気づけばテオとの出会いによって、真尋(山下美月)も花岡も侑里の秘密を理解してくれる存在になった。だから、テオが今日もどこかで元気に生きている、そう思えたら星を見上げるたびに強く生きられる気がする。大丈夫、きっとこの先も生きていける、大丈夫。そう言い聞かせながら歩いていたのではないだろうか。

そんな感傷的な気持ちでいたところに耳をつんざくクラクションが。そこに、追ってきたテオの侑里を呼ぶ声も重なる。まさか、このバイクから侑里をかばおうとしてテオが!? 予告映像では道路に横たわる2人の姿が見えたが、一体どうなったのだろうか。もちろん危機一髪で回避できたと信じたいところ。そして、2人ならではの幸せな結末が待っていることを期待しながら、来週の最終回を待ちたいと思う。

(文=佐藤結衣)

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