東京藝大油画に現役合格 大谷さん(二水)と池村さん(北陸学院)が2人同時

開代表(右)と東京藝大合格を喜び合う大谷さん(左)と池村さん=金沢市寺町4丁目のボザール絵画研究室

 芸術系大学の最高峰・東京藝大で最難関とされる美術学部絵画科油画専攻に、大谷真結香さん(18)=金沢二水高3年=と池村柚(ゆず)さん(18)=北陸学院高3年=が合格した。美術関係者によると、石川県内から同専攻に現役合格した例はほぼなく、2人同時は初めてとみられる。ボザール絵画研究室(金沢市)で切磋(せっさ)琢(たく)磨(ま)した大谷さんと池村さんは能登半島地震で避難生活も経験し、苦難の冬を乗り越えて快挙を成し遂げた。

 油画専攻の今年の一般選抜は1109人が志願し、合格者数は55人で倍率は20.2倍と全学科・専攻で最高だった。

 県内の公立高で美術専攻のある辰巳丘高と小松市立高によると、両校から油画専攻に現役合格した生徒はいない。県立高で美術教諭の勤務経験があり、現在も錦丘高で講師を務めるボザールの開光市代表(65)は「県全体でも少なくとも40年間は現役合格者はいない。私自身、教え子を東京藝大に入れるのが夢だった」と感慨深げに話した。

 池村さんは高校入学前の2021年3月にボザールに入り、大谷さんは二水高美術部に所属する傍ら、22年3月に画塾の門をたたいた。「最初から上手だったわけではなかった」(開代表)が、週6日通って平日は2~3時間、休日は丸一日、彫像やモデルのデッサンなどに励み、金沢美大の現役学生ら講師陣から指導を受けて腕を磨いた。

 能登半島地震は試練となった。池村さんは津幡町の自宅周辺の道路が崩落し、内灘町の親戚宅に1カ月以上身を寄せた。金沢市金石町の海沿いに自宅がある大谷さんも津波を警戒して金石中に一時避難した。勉強に集中できない時期もあったが、大学入学共通テストや1次、2次試験を乗り越え、14日に吉報が届いた。

 大谷さんは「多才な人が集まる大学でいろんなことを吸収したい」と期待を膨らませ、池村さんは「ほかの分野の学生とも交流し、油画以外の芸術にも挑戦したい」と抱負を語った。18年にボザールを設立した開代表は「アートシーンを背負う人間に成長してほしい」と願った。

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