ケインの初タイトルはどうなる? 歴史に残る“無冠の帝王”たちを紹介

イングランド代表FWハリー・ケインは、今シーズンも無冠に終わってしまうのだろうか。

昨年夏、1億ユーロ(約163億円)もの移籍金でトッテナムからドイツのバイエルンに鳴り物入りしたケインは、ブンデスリーガという初挑戦の舞台でもゴールを量産している。16日に行われた第26節ダルムシュタット戦(○5-2)でもゴールを奪い、得点ランキング首位を独走中だ。

また、ダルムシュタット戦のゴールにより、今季のブンデスリーガでのゴール数が「31」に到達。ブンデスリーガ創設初年度の1963-64シーズンに、当時ハンブルガーSVに所属していた元西ドイツ代表FWウーヴェ・ゼーラー氏が記録した30ゴールを超えて、ブンデスリーガにおけるデビューシーズンの最多ゴール記録を塗り替えた。

ちなみに、今シーズンの欧州5大リーグ全体で見ても、ケインはパリ・サンジェルマン(PSG)に所属するフランス代表FWキリアン・エンバペの24ゴールを抑えて、最多ゴールをマークしている。

ダルムシュタット戦のゴールで、ケインはブンデス1年目の得点記録を更新 [写真]=Getty Images

世界的なストライカーを加えたことで、バイエルンはブンデスリーガ12連覇に近づくはずだった。しかし、今季はレヴァークーゼンが公式戦無敗という快進撃で首位を快走しており、2位バイエルンとのポイント差は「10」まで開いている。よほどのことが起こらない限り、レヴァークーゼンの初優勝が濃厚だ。

トッテナムでプロキャリアをスタートさせたケインは、同クラブで9シーズン連続15ゴール以上をマーク。2015-2016シーズン、2016-2017シーズン、2020-2021シーズンにプレミアリーグ得点王に輝いたが、チームとしては栄冠を手にできていない。優勝争いに絡んだことはあるが、プレミアリーグでの最高成績は2016-17シーズンの2位。カップ戦では、2018-19シーズンにチャンピオンズリーグ(CL)で決勝まで勝ち上がるも、ファイナルでリヴァプールの前に涙を飲んだ。EFLカップでも2度の準優勝を経験しているが頂点は遠く、イングランド代表として出場したEURO2020でも、決勝でイタリア代表に敗れて準優勝。これまで1度もタイトルを獲れていない。

ケインはプレミアリーグとブンデスリーガを合わせて通算244ゴール。欧州5大リーグで最もゴールを決めている「無冠の選手」と言われている。今季はCLで準々決勝に勝ち上がっており、トッテナム時代の宿敵であるアーセナルと対戦する。初のトロフィーが“ビッグイヤー”になるのかにも注目だ。

そんなケインの他にも「無冠の名プレーヤー」はたくさんいるので紹介しよう。

■アントニオ・ディ・ナターレ

ウディネーゼの象徴として活躍したディ・ナターレ [写真]=Getty Images

ケインに次いで、欧州5大リーグで2番目に多くのゴールを記録しながら無冠だったのは、元イタリア代表FWディ・ナターレ。エンポリでキャリアをスタートさせた点取り屋は、その後2004-05シーズンから引退する2015−2016シーズンまでウディネーゼで活躍。セリエAで歴代6位の209ゴールを叩き出したが、ビッグクラブに所属していなかったためタイトルとは無縁。リーグ戦の最高成績は2011-12シーズンの3位だった。

イタリア代表としてはEURO2012でファイナルまで勝ち上がったが、決勝でアンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバ、セスク・ファブレガス、シャビ・エルナンデスの『クアトロ・フゴーネス(四人の創造者)』を擁するスペイン代表の前に0-4で敗れ去った。

■ベルント・シュナイダー

シュナイダーは巧みな技術を誇りながら、ケガにも泣かされた [写真]=Bongarts/Getty Images

MFベルント・シュナイダーは、ドイツ代表81キャップを誇りながら1度も栄冠に手が届かなかった。1999-2000シーズンから2008-2009シーズンまでレヴァークーゼンに在籍したシュナイダーは、加入初年度にブンデスリーガ初制覇に王手をかけるも、勝てば優勝が決まる最終節でウンターハヒンクに0-2で敗れると、バイエルンに勝ち点で並ばれ、得失点差でタイトルを逃した。その2年後、再び初優勝を目指して快調に飛ばしていたが、4ポイント差のリードで迎えた残り4試合でドルトムントに逆転されて再び栄光を逃した。その2001-02シーズンは、DFBポカールの決勝でシャルケ、CL決勝でレアル・マドリードに敗れて3つの準優勝。「ネヴァークーゼン」と揶揄されることになった。

シーズン終了後、シュナイダーはドイツ代表としてFIFAワールドカップ日韓2002に出場。順当に勝ち上がるも、決勝でロナウド、リヴァウド、ロナウジーニョらを擁する“カナリア軍団”の前に敗れ、あと1歩のところでジュール・リメ・トロフィーに手が届かなかった。4年後、2006年のドイツ大会にも出場したシュナイダーだが、その時は準決勝でイタリア代表に敗れて3位に終わり、最も不運な選手として知られている。

■ソクラテス

“黄金のカルテット”の1人、ソクラテス [写真]=Icon Sport/Getty Images

FIFAワールドカップスペイン1998でジーコ、ファルカン、トニーニョ・セレーゾとともに“黄金のカルテット”を形成した元ブラジル代表MFソクラテスも主要タイトルとは縁がなかった。そのワールドカップでは、華麗なサッカーを披露するも2次リーグでイタリア代表に敗れて敗退。母国ブラジルのクラブチームでは、コリンチャンスやフラメンゴで州選手権こそ制したが、全国規模のカンピオナート・ブラジレイロ・セリエAでは優勝できなかった。ブラジル代表ではFIFAワールドカップだけでなく、コパ・アメリカも制することができず。2011年に他界したソクラテスは“歴代最高の無冠プレーヤー”とも言われている。

■フレン・ゲレーロ

ゲレーロはクラブキャリアではアスレティック・ビルバオ一筋でプレーした [写真]=Getty Images

1990年代のスペインサッカー界のスター選手も無冠だった。アスレティック・ビルバオ一筋でプレーした元スペイン代表の攻撃的MFフレン・ゲレーロは、クラブチームで無冠に終わり、スペイン代表としても1994年から国際主要大会に3回出場するもタイトルは遠かった。ゲレーロ同様、バスク州から出ることなくプレーしたMFホセバ・エチェベリアもタイトルとは無縁だった。1997年から2004年までスペイン代表で53試合に出場しながら、栄冠には手が届かなかった。

■ソン・フンミン

今やトッテナムでも韓国でもエースのソン・フンミン。今後トロフィーを掲げられるか [写真]=Getty Images

トッテナム時代のケインの相棒も“フル代表”のタイトルとは無縁だ。今季からトッテナムで腕章を巻くFWソン・フンミンは、2021-22シーズンにプレミアリーグで23得点を記録し、アジア人として初めて欧州5大リーグの得点王に輝いた。しかし、トッテナムではCL準優勝が最高成績で、まだタイトルを確保できていない。韓国代表としても、2018年のアジア競技大会で栄冠を手にしたが、その大会は基本的に23歳以下が対象。AFCアジアカップカタール2023でもベスト4で終わり、代表レベルでも未だに無冠が続いている。

(記事/Footmedia)

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