雅子さま 日帰り800キロ、現地ではマイクロバス移動…能登慰問は「被災地の負担を最小限に」

昨年10月、金沢市で開かれた「いしかわ百万石文化祭」の開会式に臨まれた天皇陛下と雅子さま

「正直な気持ちを言えば、石川県の復興には、とても時間がかかるでしょう。それでも、天皇陛下と雅子さまには、いつか立ち直った石川県も見ていただきたいです」

2月に本誌の取材にこう答えていたのは、“左手のピアニスト”として知られる黒崎菜保子さん。石川県野々市市に暮らす黒崎さんは、昨年10月に開催された「いしかわ百万石文化祭」で、天皇陛下と雅子さまの前で演奏を披露している。

1月1日に発生し、最大震度7の大地震と津波などで240人以上の死者を出した能登半島地震。珠洲市で暮らしていた黒崎さんの夫の叔父といとこも犠牲になっている。黒崎さんは、本誌の取材に次のようにも語っていた。

「被災地の人たちはみんな不安を抱えています。でも、両陛下のお姿を見ることができたら、きっと元気が出ると思います」

発生から3カ月近く、被災地を思い懊悩される日々を過ごされてきた天皇陛下と雅子さま。3月22日、ついに被災地を訪問される。両陛下は、家族を失った人や被災した人々だけではなく、救援や復旧作業にあたる自衛隊、消防、警察、医療関係者や自治体職員たちに、ずっとお心を寄せ続けてこられた。名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんはこう話す。

「両陛下は、一日でも早く被災地を訪問され、被災者を見舞われたいお気持ちがあったはずです。しかし同時に、“被災者や復旧作業にあたる人々に迷惑をかけてはならない”というお考えもお持ちになっていたようにお見受けします。

これまで天皇ご一家は、気象庁長官や日本赤十字社社長などから、能登半島地震のメカニズム、詳細な被災状況、現地の医療支援態勢と、さまざまなテーマのご進講を頻繁に受けられていました。こうしたお姿を発信されていくことで、“国民と苦楽を共にする”という皇室の立場を明確にされているように思います」

能登半島へのご訪問では、両陛下は日帰りで、被害が甚大だった輪島市や珠洲市などを巡られると報じられてきた。通常、両陛下の地方行幸啓では宮内庁長官以下、多数の宮内庁幹部が同行するが、それも半分程度の随員に絞られるという。

「羽田空港から特別機で能登空港に入り、そこから自衛隊のヘリコプターで被害が大きかった奥能登へと向かわれます。現地ではヘリのほか、両陛下は一台のマイクロバスに側近らと乗り込まれて、移動されるそうです。半島という地形で起きた災害のため、土砂崩れで道路網が寸断され、被災地内での移動は地震前のようにスムーズに行えません。

両陛下は御所をご出発以降、12時間前後の所要時間を、分刻みのスケジュールで動かれます。直線距離でも800キロ近く移動されることになるので、陛下と雅子さまのお体にも相当な負担がかかるハードな日程です。しかし、“現地の負担を最小限にしつつ、なるべく早く被災者を見舞う”という難題をクリアするため、両陛下は宮内庁や石川県と入念な調整を続けられてきたのです」(宮内庁関係者)

■ご訪問を端緒に支援の輪を……

復旧作業が進んでいるとはいえ、現在も珠洲市の一部などをはじめ断水が続いている地域があるという。さらに経済的な被害は、暗雲のように能登の人々に立ち込めている。

「先月末、石川県の馳浩知事は県議会で、地震による農林水産業の被害総額は約2千億円にのぼると明らかにしました。特に能登半島で盛んな水産業は、約1千億円と最も多く、被害額はさらに上振れする可能性があるというのです。志賀町、輪島市、珠洲市の22漁港は地震で海底が隆起して水深が不足したりするなど、深刻な被害が出ています。

両陛下はご訪問の中で、ヘリで上空から奥能登地域を視察されながら、漁港をはじめとする水産業の拠点にも足を運ばれるそうです。出発直前まで漁業関係者をはじめお会いする人々についての情報を収集され、ご訪問に臨まれるはずです」(皇室担当記者)

そして時間が許す限り、両陛下は復興に向けて懸命に生きる人々を励まし、力になることを誓われている。

「現地の住民にとっても生活の場であり、ほぼ全域が火災で焼失した輪島朝市も訪問される予定だと聞いています。ご訪問によって被害の状況が全国に報じられることで、苦しむ能登の人々に対する支援の輪が広がることにつながれば、復興への力添えになることを、両陛下は願われているのです」(前出・宮内庁関係者)

何よりも、今回の被災地ご訪問にかける雅子さまのお気持ちの強さは、愛子さまの節目よりも優先して臨まれるほどだと、前出の皇室担当記者は語る。

「3月20日に、愛子さまは学習院大学の卒業式を控えられています。“陛下と雅子さまも節目を祝われるのではないか”という声も聞こえましたが、当日は宮中祭祀もあり、また被災地ご訪問の準備を優先されるため、両陛下は卒業式には出席されないそうです。

東日本大震災や熊本地震、2019年の台風19号の被災地でなさってきたように、陛下と雅子さまは優しくお声がけされながら、悲嘆に暮れる人々を慰められるでしょう。またそうしたお気持ちは、愛子さまにも通じているはずです」

強行日程に挑まれる陛下と雅子さま。ご訪問は、悲劇が襲った能登半島の4市5町に住む約17万人の心に希望の光を灯すーー。

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