キャリアを重ねるにつれ、職業づけするのが無意味に思えてくる津田健次郎。声優に俳優、ナレーター、さらに2019年には映画監督としてもデビューした。そもそもは声優として、アニメ『呪術廻戦』の七海建人、『ゴールデンカムイ』の尾形百之助、『極主夫道』の龍と、様々な役でその存在を知られ、いまや連続テレビ小説『エール』、連続ドラマ『最愛』を皮切りに、特に2020年以降、俳優としても引っ張りだこ。そんな津田さんのTHE CHANGEとはーー。【第2回/全5回】
声優として、役者として、八面六臂の活躍を見せている津田さん(52歳)。現在も声優として『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』が、俳優として『映画 マイホームヒーロー』が公開中だが、このところの映像での活躍は、自身の中でも転機だと言う。
「30歳の節目くらいで、この仕事でやっていけるようになったことが、自分の人生としてはまず転機だったと思います。ただ近年では、NHK朝ドラの『エール』や、ドラマ『最愛』をやらせていただいたことで、いろんな方に知っていただいて、実写のほうでもお声がけいただくようになったのは大きいです」
――津田さんは、そもそも声優志望だったわけではなく、舞台からのスタートですよね。
「そうです。声優という発想はなかったです。外からのご縁がきっかけで、声優のオーディションをたまたまいただいて、それを受けたら受かったんです。そこからまたご縁でお声がけいただくようになって、そのうちヒット作も生まれて、俳優と声優の仕事量が逆転していって、声優と呼ばれるようになっていきました」
声優でオーディションと言われてビックリ!
――津田さんといえば、いわゆる“イケボ”で知られています。しかし自覚はなかったということですか?
「クセのある声だなとは思ってました。ちょっと変わった声だなと。“イケボ”とか言われるのは、自分のことじゃない感じです。“そうなの?”って」
――では、最初に「声優でオーディションを」と言われたときも。
「正直、ビックリでした。ただ、とにかくお芝居をさせていただけるというのがありがたかったので、“ぜひ受けます”という感じでした」
――そこから声優として数々の人気キャラクターを演じてきました。『エール』や『最愛』が俳優業でも知られる転機になったとのことですが、役者として活動することへの熱もずっとあったわけですよね。
「この転機は、ある日、突然ご連絡をいただいて参加させていただくことになった、みたいな感じでした。そこから俳優としての仕事も増えていったわけですけど、声優として、俳優としてといったボーダーラインの意識は、僕はもともと薄いんです。
声優としての仕事も“芝居”ですから。アニメーションでも洋画の吹き替えでも。僕は舞台からスタートしていますが、舞台でやる芝居も映像も、全て演じることに変わりはありません。あくまで作品の違いです。
同じアニメーションでも、それこそ二頭身キャラもいれば、すごくリアルでナチュラルな芝居を必要とする作品もある。舞台でも2000人クラスの劇場と100人、200人の劇場では、芝居の仕方も変える必要もある。ジャンルで線を引くより、作品で変わっていく感覚です」
高校では生徒会長を経験
――ところで津田さんは高校生のときに生徒会長だったそうですが、生徒会長選挙の際には演説をされました?
「ああ、やりましたね」
――そのときに、すでに津田さんの“イケボ”がひそかに役に立っていたといったことはないのでしょうか。堂々と演説されていたのでは。
「どんなこと話したのかな。覚えてないんですけど、大したこと言ってないと思うんですけどね。そもそも生徒会長になりたいという人がほぼいなくて。選挙といっても候補があとひとりしかいなかったんです。もうひとりはすごく真面目で勉強ができる人で。僕はというと、体育会系の部活とかの友達が多くて、そういった仲間が入れてくれたりして。僕みたいなタイプが生徒会の候補に出てくるのが珍しかったんだと思いますよ」
そう謙遜するが、きっと高校生時代も、周りを惹きつけるステキな生徒会長だったのだろう。
津田健次郎(つだ・けんじろう)
1971年6月11日生まれ、大阪府出身。1995年に声優デビュー。近年は俳優業でも活躍。声優業の近年の代表作として、『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』や『薄桜鬼』『ゴールデンカムイ』『呪術廻戦』『チェンソーマン』など。俳優業として、2020年のNHK連続テレビ小説 『エール』(兼ナレーション)、ドラマ『最愛』『ラストマン-全盲の捜査官-』『大奥 Season2』、映画『映画 イチケイのカラス』『わたしの幸せな結婚』『映画 マイホームヒーロー』など多数。