【漫画】ただ平穏に暮らしたい女子高生に“町おこし”を依頼したら……“アンチ青春”なSNS漫画が面白い

「青春」にもさまざまな形がある。一致団結して何かに挑戦することも、全力で恋をすることも紛れもなく青春だが、面倒を避けてのんびりとした日常を守ろうと知恵を絞るのも、それはそれで青春だろう。Xに2月下旬に投稿された創作漫画『北高まちおこし部はまちおこさない』は、そんな“アンチ青春”な青春漫画だ。

北海道の小さな町にある北高。文芸部の部長・工藤、部員・アララギ、顧問・明智は、部室でのんびり漫画を読むことを日課にしていた。しかし、有名IT社長がJK(女子高生)に町おこしをさせることを思いつき、市内の全高校に「まちおこし部」が設立されることに。目的のない日々を送っていた文芸部は突然、まちおこし部として活動することを命じられてしまうが、ミーハーな陽キャたちから平穏な日々を守るため、彼らは「新入部員の徹底阻止」を計画して……。

本作を手掛けたのは、普段は仕事をしながら空いている時間を利用して漫画制作に取り組んでいるという出倉ナオさん(@dekura70)。ゆるりとした青春漫画でありながら、フックのあるシーンも豊富な本作がどのように生まれたのか、話を聞いた。(望月悠木)

■誰にも邪魔されない、部室という聖域

――『北高まちおこし部はまちおこさない』の設定などはどこから着想を得たのですか?

出倉:ニュースで「有名人が女子高生にまちおこしをお願いする」という話題を見たことがキッカケになってます。「それが私の地元・北海道で起きたらどうなるかな」と思って描き始めました。

――「部員集めをする」という青春漫画の王道ではなく、「新入部員を入れさせない」ということを目的にしている切り口が面白かったです。

出倉:私も学生時代、部室の居心地が良くて、誰にも邪魔されない聖域みたいな感覚がありました。それはある意味ムラ社会のように閉鎖的な空間です。「部室も町もちょっと似てるかな」という、そんなイメージからストーリーを膨らませていきました。

――アララギ、工藤、明智など、文芸部に属する登場人物はどう造形しましたか。

出倉:キラキラした高校生とは縁がなさそうな脱力系を意識して作りました。また、アララギのジト目について読者さんから「かわいい」という声は結構多かったです。実はアララギのジト目は特に「かわいく描こう」と意識していなかったのですが、思いのほか好評だったので嬉しかったです。

――3人のゆるい会話劇はとても面白かったです。

出倉:3人をダラダラさせていたら、いつの間にかツッコミ役不在になり、気がついたら自然とゆるい空気感になりました。

――校長のスピーチをまるまるパクッて入部阻止を図る、というとんちのような作戦は秀逸でした。この作戦はどのようにして思いついたのですか?

出倉:1話はとても苦労していて、このシーンの切り口は何度も作り直しました。いろいろ試行錯誤を重ねるうちにひらめいたアイデアです。

――現在まで10話更新されています。今後ストーリーはどのようなに展開していきますか?

出倉:これまではマチで暮らしている人たちの話だったので、「今後は町に縁もゆかりもなかった人がやってくる展開も面白いかな」と思っているところです。

――今後にこれからの目標を教えてください。

出倉:「くすっと笑えるような話をマイペースに描いていけたら良いな」と思っています。

(望月悠木)

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