「許されてるんだと思って…」勤務先の小学校で児童に性的暴行、元教員に「懲役11年」

東京地裁立川支部(MARODG / PIXTA)

小学校の教員として児童らを指導するなか、複数の男児の下半身を撮影し、性的暴行を加えたとして起訴されていた男に対して、東京地裁立川支部(岡田健彦裁判長)は3月6日に懲役11年の判決を言い渡した(求刑懲役14年)。

この裁判はプライバシー秘匿のため、被害児童等の氏名だけでなく、被告人名も非公開であり、開廷表には「被告人」としか記されていなかった。ひとりの被害児童が校長先生に相談したのち、被告人は懲戒免職になっている。ところが普段、懲戒処分が発表されるはずの都の教育委員会ホームページにも、この懲戒免職の情報は記載されていない。(ライター・高橋ユキ)

●勤務先の小学校で犯行を繰り返していた

40代とおぼしき被告人は、2件の強制性交等罪、15件の強制わいせつ罪、そして49点の動画を保存したという児童ポルノ禁止法違反で起訴されていた。

被害に遭ったのは、当時小学校5〜6年生だった10歳から12歳までの男児5名。教師として勤務していた公立小学校で犯行を繰り返していた。強制性交等では男児に対して口淫する・させる、強制わいせつでは男児の性器を触る、自慰行為をさせるなどの行為に及んでいたという被告人には、事件発覚により離婚した妻との間に子供が4人いた。

前回公判で行われた被告人質問で「5〜6年生の高学年や荒れるクラスを任されることが多かったです。まず一人一人の話を聞き、信頼関係を作り、リーダーとなる子を見つけ、クラスをまとめていっていました。普段の授業でお褒めの言葉をいただいたり、たくさんの仕事を任され、多くの人に信頼していただいていたと思います」などと、自身の教員としての仕事ぶりを振り返っていた被告人はその陰で、児童からの信頼を裏切り続けていた。

●「性的欲求を満たすために撮影してしまった」

犯行期間は数年間に及ぶ。校内の家庭科準備室やコンピューター室、教室、男子トイレなどにおいて、児童の下半身を露出させたうえ動画を撮影したほか、着衣の上から児童の下半身を触る、児童の下半身を口に含む、または自身の下半身を児童の口腔内に入れるなどの行為に及んでいた。

この間、別の小学校へと転勤になったが、その後も犯行をやめるどころか繰り返し、エスカレートさせていった。起訴されている事件における被害児童は5名だが、被告人は自ら「他にも(同様の行為を行った児童は)7〜8人いたと思う」と語っており、多くの男子児童が被害に遭っている。被害児童には口止めすることも忘れなかった。

「僕の周りに信頼して近づいてきてくれる子が多く、仕事も落ち着いてきて余裕が出てきた。違う方向に目が向き加害に及んだ。個人的な性的欲求を満たすために撮影してしまった」などと被告人質問で事件に至った心情を振り返った被告人は、児童らを導く立場にあったが、自分には甘かったようだ。

「『いや』という子もいましたが『大丈夫』とか言う子もいて、それを私は自分に都合よく解釈して、これはやっていいことなんだ、許されてるんだと思ってしまった」(被告人の証言)

●「被害児童らの心を踏みにじる卑劣な犯行で言語道断」

裁判長は判決で、そんな被告人を「児童からの信頼に乗じ、性の知識の未熟さにつけ込んで犯行に及び、その様子をスマホで撮影して保存していた。児童にとって本来安全な場所であるはずの小学校で行われており、悪質性が高い。被告人を信頼して疑うことをしない被害児童らの心を踏みにじる卑劣な犯行で言語道断」と断じた。

「嫌な思いをした、恥ずかしい思いをしたと複数の被害児童が述べており、将来への被害や、心身の悪影響も懸念される。結果は重大で被害児童や保護者の処罰感情は厳しい。転勤しても2年以上にわたり『被害児童が嫌がっていない様子だった』と身勝手な言い訳をして欲望のままに犯行を繰り返しており、常習性は顕著で、規範意識の鈍磨は甚だしい。非常に反情が悪く悪質で、相当長期の服役は免れない」(判決より)

いっぽうで、一部の被害男児に対しては被害弁償を行っていたことや前科がないことなどを考慮した結果、懲役11年の判決となったという。被害男児のひとりは事件後、夜に眠れなくなり、カウンセリングに通い続けている。

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