【3月20日付社説】マイナス金利解除/地方への影響まだ見通せぬ

 日銀が大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策の解除を決めた。17年ぶりの利上げとなる。デフレ脱却に向けた異次元緩和を長く続けたことで、極度の円安などによって経済の停滞感が強まるなど負の影響は大きかった。日本経済の正常化に向けた大きな転換点となる。

 日銀は春闘の平均賃上げ率が5.28%となったのを受け、賃金と物価がそろって上昇する好循環が実現する確度が高まったと判断した。株価、為替市場への影響が今後の焦点だ。

 政策決定後の日経平均株価に大きな値動きはなかった。利上げは本来、円高に作用する力があるが、為替市場は円安に振れる動きを見せた。株式と為替の市場は、政策決定前から、マイナス金利解除などを織り込んだ売り買いが行われ、大きな混乱はなかった。

 米欧主要国では近く利下げが行われるとの観測がある。海外の利下げにより、金利差が縮小すれば、円高に転じるとの見方があり輸出産業への影響が注目される。

 日銀の植田和男総裁は政策決定後の記者会見で、マイナス金利などの解除後も、緩和政策そのものは当面継続する考えを繰り返し強調した。長年続けてきた政策を転換する影響は予測しにくい。日銀は混乱を最低限に抑えられるよう、市場や各国中央銀行の動き、各種指標を注視しつつ、慎重な判断が求められる。

 心配なのは、中小企業や地方への影響だ。銀行から借り入れる資金の金利が上昇すれば、設備投資などを行う際の中小企業の負担が増し、体力強化の動きが鈍くなる恐れがある。

 ゼロ金利政策の継続により、円安傾向に大きな変化はないとみられ、物価高の緩和につながる材料には乏しい。大手企業では大幅な賃上げがあったものの、中小企業にまでその流れが波及しているかが判断できるのは夏ごろとみられている。特に地方の中小企業は賃上げが十分に進んでおらず、物価高に追いついていない。

 日銀の政策転換に伴う地方の中小企業や所得が増えていない労働者への影響は見通せない。国は、地方経済への悪影響が生じないようにすることが重要だ。

 国財政の規律を緩めたこともマイナス金利政策の負の側面の一つだ。今後、国の予算を圧迫している国債の償還費の増加が見込まれる。政策転換を経済の拡大に向かわせることができなければ、償還費の負担はさらに大きくなる。借金頼みの財政運営の見直しは待ったなしだ。

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