北朝鮮との2連戦、FWの起用法は? 主軸は上田綺世、空中戦に強い小川航基がキーマンに

サッカー界にとどまらず、社会的関心の高い2026年北中米ワールドカップ・アジア2次予選の北朝鮮との2連戦。アジアカップで惨敗の日本代表にとっては重要な出直しのシリーズとなる。3月21日に国立で、26日には平壌の金日成スタジアムで対戦する。

「こっちのホームとあっちのチームだと全く別の戦いになる。まずは変に意識し過ぎず、ホームでしっかり勝点3を狙っていければいい」と久保建英(レアル・ソシエダ)も強調。第1戦は相手の戦意を削ぐような内容と結果で勝って、敵地に乗り込みたいところだ。

そのためにも、決めるべきところで決められる点取り屋の存在が必要不可欠。第二次森保ジャパン発足後のFW陣を見ると、2023年に7得点、アジアカップでも4得点を挙げている上田綺世(フェイエノールト)がエースに最も近い存在だ。

裏抜けやクロスなど多彩なパターンでゴールを奪える彼への森保一監督の評価は高い。長年、課題と言われたポストプレーに関しても、ここへきて目に見える進化を遂げており、今回の北朝鮮2連戦も上田が主軸になるはず。21日のゲームもスタメンが濃厚と見てよさそうだ。

一方で、森保監督は浅野拓磨(ボーフム)に絶大な信頼を寄せている。アジアカップでもイラク戦で1トップに抜擢。北朝鮮がハイプレスを仕掛けてくるという情報もあるため、爆発的なスピードで背後を突けるこの男を最前線に配置するという選択肢もないわけではない。

ただ、今回の日本はご存じの通り、伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)と三笘薫(ブライトン)の“左右の槍”が揃って不在。サイドに推進力をもたらすために、速さと泥臭さを併せ持つ浅野のサイド起用は十分に考えられる。

「監督からはどこでも考えていると言われている」と本人も語っており、心の準備はしている様子。同じスピードタイプの前田大然(セルティック)も所属先で左右のサイドを主戦場としており、やはり外でのプレーがメインになりそうだ。

となると、上田と並ぶFWと位置づけられるのは、今季はオランダで公式戦12ゴールを奪っている小川航基(NEC)しかいない。2019年のE-1選手権以来のA代表復帰となった186センチの大型FWは空中戦に強く、左右のクロスから競り勝ってゴールできる貴重な存在なのだ。

ゴール前に人数をかけて守ってくる格下の相手が多いアジアの戦いでは、クロスからの得点力というのが非常に大きな意味を持つ。リスタートにしても同様で、「高さで勝てる点取り屋」がいるかいないかで、試合展開は大きく変わってくるのだ。

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上田も長身ではあるが、ヘディングよりも左右両足のシュートの方が得意。空中戦から点も取れる選手というイメージではない。もちろん浅野も前田もそのタイプではないだけに、小川の参戦によって、日本に新たなオプションがもたらされるのは間違いないだろう。

「僕の得点パターンを見てもらったら分かると思いますけど、クロスからのゴールっていうのは非常に多彩なものがある。ヘディングにしても、タイミングを駆け引きするなど、いろんなパターンで得点できるのが僕の強み。日本の力になることはできると思いますね。

セットプレーに関しても、僕自身は結構、点を取っている。特に最終予選、2次予選ではセットプレーも非常に大きなカギになってきますし、そういった部分でも力になれると思います」

堂々とこう言ってのけるほど自信をみなぎらせる小川。A代表からは4年3か月も遠ざかっていたが、彼はもともと東京五輪世代のエースFW筆頭だった。

板倉滉(ボルシアMG)や堂安律(フライブルク)らとともに2016年U-19選手権や2017年U-20W杯にも出ていて、数々の修羅場もくぐってきている。それも心強い要素。森保監督が長い間、成長を待ち望んでいた大器が満を持して代表の戦力になるのだ。

しかしながら、過去の積み上げと実績を重要視する指揮官がいきなり小川を公式戦の北朝鮮戦でスタメン起用するとは考えにくい。ホームでの一戦はまず上田でスタートから戦い、途中から小川という形になるか。そういうなかで小川が強烈なインパクトを残してくれれば、今後の序列が変わることも少なからずありそうだ。

そのうえで、平壌でのアウェーゲームを迎えるが、浅野、前田を含め、誰が出るか分からない状況になれば、日本にとってはポジティブ。敵も出方が分からず、苦労するはずだ。

そうやって誰をチョイスしてもいいような多彩なFW陣を用意できれば理想的。特に小川のパフォーマンスに注目しながら、この2連戦でより多くのゴールを奪い、死に物狂いでぶつかってくる北朝鮮を退けてほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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