映画オッペンハイマー試写会 朝長氏「敵意克服が核廃絶のヤマ場」と語る 長崎

トークショーで映画の感想を語る朝長氏(左)と前嶋氏=長崎市尾上町、ユナイテッド・シネマ長崎

 米国の原爆開発を率いた物理学者を描いた映画「オッペンハイマー」の特別試写会が18日夜、長崎市内であった。被爆者で医師の朝長万左男氏は試写後のトークショーで、開発者の苦悩と広島・長崎への投下を決めた政治家との「分断」が表現されていると指摘。「原爆使用の決断は、大国同士の敵意として人類に迫ってくる。その敵意の克服が核廃絶の最大のヤマ場だ」と語った。
 映画では原爆開発を成功させたオッペンハイマー博士が被爆地の惨状を知って苦悩し、その後の水爆開発に反対する。クリストファー・ノーラン監督が手がけ、米アカデミー賞で作品賞など7冠を獲得した。
 試写会はビターズ・エンド主催、長崎新聞社共催。約130人が来場した。トークショーで朝長氏は「核なき世界が遠のく現在の根本問題につながる映画。政治家の責任を追及する監督のメッセージを感じた」と評価。原爆被害の直接的な表現がないことは「弱点とも思うが、せりふでは何度も、被爆の実相にショックを受けたことに触れられている」と述べた。
 米国政治に詳しい上智大教授の前嶋和弘氏は「原爆に対して自省的、批判的な映画」との見解。原爆投下の正当化論が根強い米国では、数十年前なら作れなかった内容だとし、その後のテロや戦争を経験した中で「核を見詰め直さないといけない、と変わってきた。アメリカの変化の映画だ」と話した。

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