「神様と氏子に申し訳ない」青森・五所川原市の神明宮火災で宮司が涙浮かべ悔やむ

 「神社を守るのが宮司の務め。神様と氏子の皆さまに対して本当に申し訳ない」。19日早朝に火災が起きた青森県五所川原市の神明宮の齋藤麻毅宮司(65)は、焼け跡を前に目に涙をためながら東奥日報取材に語った。

 神明宮は、五穀豊穣(ごこくほうじょう)などを祈願する同市の伝統行事「奥津軽虫と火まつり」の神事や採火が毎年行われているほか、初詣や七五三の際には多くの人でにぎわい、地域に親しまれている。2019年までは県無形民俗文化財「津軽神楽」の奉納も行われてきた。

 神明宮は1664(寛文4)年に現在の同市本町に創建された。ショッピングセンター「ELM(エルム)」に近い現在地に移転したのは1996年からで、齋藤宮司によると、同年に社務所、97年に拝殿、98年に本殿が完成した。全焼した拝殿は主にヒバが使われており、「柱は焦げてしまった。屋根の銅板も職人さんが一生懸命造ってくれたのに…」と齋藤宮司は無念を口にした。

 一方、伊勢神宮(三重県伊勢市)で使われていたヒノキを活用して建てられた本殿は大きな被害を免れた。「このままにしてはいけない。後片付けをしながらまつりごと(行事)を続け、地域に奉仕していきたい」と齋藤宮司は再建への思いを口にした。

 日中は神社を心配する人たちも次々と訪れた。近くに住む70代男性は「子どもも孫も、生まれた時にここでご祈禱(きとう)してもらった。ついこの前は孫の高校受験の合格祈願に来た。まさか焼けてしまうとは。(神明宮は)市民にとっては守り神のようなもの。ショックだ」と話した。

© 株式会社東奥日報社