尊富士止まらない!猛進撃の10連勝 速く、低く、重い出足 佐渡ケ嶽審判部長も「迷いがない」と絶賛

 トップの座は渡さない-。ちょんまげ姿の24歳・尊富士(たけるふじ)(青森県五所川原市出身)がざんばら髪の23歳・大の里との若手有望株同士の一戦を制し、無傷の10連勝を飾った。優勝争いで後続に2差をつけ抜け出した。「まだ始まったばかり」というライバルとの戦いに圧勝し、自信を深めた角界期待の星。「優勝は全く意識していない。残り5日間やるだけ」と一段と集中力を高めた。

 立ち合い、白星街道をひた走る尊富士はいつも通り、少し右脚をひいた構え。ここから速く、低く、重い、「尊富士スペシャル」とも言える強烈な出足が光った。右はず、左ものぞかせると、後は一直線。好調大の里はなすすべなく土俵を割った。勝負を見届けた佐渡ケ嶽審判部長(元関脇琴ノ若)は「新入幕らしい元気いっぱいの相撲。迷いがない」と絶賛した。

 恵まれた体格を生かし、圧倒的な存在感を見せつけてきた大の里。だが尊富士は、体重で40キロ上回る183キロの巨漢との対戦を控えた前日、「体重があれば勝てるわけではない」とスピード相撲に絶対の自信をのぞかせていた。狙い通りの取り口に「差されたら駄目だと思っていたのでイメージ通り」と満足そうだ。

 出世が早すぎて、関取の証しともいえる大銀杏(おおいちょう)が結えない2人。尊富士は年6場所制となった1958(昭和33)年以降1位タイの所要9場所(幕下付け出し除く)で、十両を1場所で通過。八角理事長(元横綱北勝海)も「幕下のころから良いと思っていた」と太鼓判を押す逸材だ。

 だが学生時代は膝のけがに苦しみ、思うような成績を残せなかった。

 対する大の里は2年連続アマチュア横綱の実績を引っさげ、幕下付け出しで角界デビュー。「はるか上の記録を持っていたので、大相撲に入ったら大舞台で対抗してやる、という気持ちで必死に稽古した」と意識していた相手だ。「早い段階で実現できてうれしい」と尊富士は素直に喜びを見せた。

 これで尊富士の新入幕初日からの連勝記録は10で歴代単独2位となり、1位の元横綱大鵬が1960(昭和35)年初場所に記録した11に迫る。

 14(大正3)年5月の両国以来、実に110年ぶりとなる新入幕優勝への期待も大きい。尊富士は「自分の相撲を取り切れるように頑張る」と、口元を引き締めた。

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