「円高なら追い風」「為替乱高下は混乱招く」マイナス金利解除に青森県内企業は安堵と警戒交錯

輸入小麦を原料とする麺を製造する高砂食品。円高による小麦価格の低下を期待する=15日、平川市

 日銀のマイナス金利政策解除により、市中の金利が上昇に向かうだけでなく為替が円高に振れる可能性がある。為替変動は流動的だが、円安で原材料の輸入コスト増加に直面してきた青森県内企業からは「これまでは苦しかった。円高になれば追い風だ」と安堵(あんど)の声が聞かれる。一方、輸出を手がける事業者は円高に振れることを意識しつつ「急激な為替変動は混乱を招く」と警戒する。

 マイナス金利解除によって金利が上がることで日米の金利差が縮小し、為替が円高に振れる要因になる。日本は原材料やエネルギーを輸入に頼っているため、円高は輸入物価を下げる効果がある。

 麺の総合メーカー・高砂食品(平川市)は、円安による輸入小麦の価格高騰に苦しんできた。草刈保昌社長は「円高になれば小麦の政府売り渡し価格が下がり、追い風になるのではないか。麺をゆでるのに使うA重油の価格も下がれば、なおいい」と期待する。

 草刈社長によると、輸入小麦の政府売り渡し価格が高かったのは2023年4月期の1トン当たり7万6750円。近年で安かった10年4月期の4万7160円と比べると、3万円近く高い。24年4月期は6万7810円に決まり、ピークより下がりつつあるが「機械化などで人件費を減らす企業努力を続けている。円安の状態がこれ以上続くのは厳しい」という。

 地域商社・ファーストインターナショナル(八戸市)は、県産リンゴなどの輸出に加え、食品などの輸入も手がける。桜庭雅紀常務取締役は「円高になれば輸入はしやすくなるし、輸出はその逆になる」と双方への影響を指摘。「円安が続くと輸入に関してはコスト高になってしまうため、できる限り価格転嫁を試みている。円高、円安どちらに動くにしても急激な変化は好ましくない。円高が駄目というより、急激に10円以上変動するほうが混乱を招く」と語る。

 中国の禁輸措置、漁獲量の減少などにさらされている水産加工会社も、今後の為替変動に気を配る。

 水産加工・卸売業の小田桐商事(青森市)は、香港や台湾などのアジア圏を中心にホタテ加工品などを輸出している。輸出には商社が間に入るため、橋本邦之総務課長は「円高になっても直接的な影響は小さいと思うが、ないとも言えないだろう」と状況を見守る姿勢だ。

 ちくわなどの魚肉練り製品製造・販売の丸石沼田商店(青森市)の沼田祐寛社長は「円高になれば、新規の輸出先と商談する際に影響が出るかもしれない。でも一部原料には米国のすり身を使っているため、(輸入面では)メリットになる」と話した。

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