「養育費は払わない」と別れた元夫。障害のある子を預かる保育園も見つからない…ひとり親の20代女性は将来が不安

値引きシールが貼られた商品。一人で子育てする女性は日々節約に励む

 国や自治体は少子化対策の柱に子育て支援を掲げる。少子化の背景には、ジェンダーギャップ(男女格差)があるとの指摘がある。性別による役割分業意識やイメージの決めつけは、出産や子育てにどう影響するか。鹿児島の今を探った。(連載「子育て平等ですか?かごしまの今」③より)

 鹿児島県内で10代少女を一人で育てる40代女性は非正規のフルタイムで働いている。数年前の年収は110万円以下。物価高騰の中、暖房はなるべく使わず、食品や服は値下がりした物から選ぶようにしている。

 前の職場で正社員を目指していた。子どもに発達障害があり、そのケアをする必要もあった。表向きは「休んでいい」と言われたが、実際に欠勤や遅刻が続くと「何で子どもを誰かに預けられないの」のひと言。

 勤務が長くなると体力は持たず、自炊ができない日々が続く。スーパーで総菜を買うと、結局お金がかかる。休むと収入が減る。子どもは「私ずっと一人だ」と寂しそう。「負のループ」だったと振り返る。

 ひとり親や障害に理解のない世の中はつらかった。子どもと一緒に死のうと思ったことも何度かあった。それでも今生きているのは「せっかく生まれてきたこの子に、幸せになって笑って過ごしてほしいから」。

□□□

 県内で未就学児を育てる20代女性は、仕事に就いていない。元夫は子どもに関心が薄く、別れるとき「養育費は払わない」と言われてしまった。争う気力もなく、諦めた。障害のある子どもに対応できる保育園が見つからず、働けない状況だ。

 「自分一人で生活できるようになりたい」。そう願い、日々インターネットで求人情報を探す。どの仕事も勤務時間が固定されているのが、一番のハードルになっている。「今後小学校、中学校と進めば、お金もかかると思う。子どもの将来も経済的な面も、漠然と不安を感じている」

 厚生労働省の2021年度ひとり親世帯等調査によると、平均年間収入は母子272万円、父子518万円と開きがある。背景には、女性が非正規で働く傾向があるとみられる。調査で就業状況を見ると、正規で働く割合は母子48.8%、父子69.9%、パートやアルバイトは母子38.8%、父子4.9%。自営業は母子5%に対し、父子14.8%となっている。

□□□

 県内のひとり親世帯は20年、1万4222世帯。内訳は母子世帯が1万2749世帯、父子世帯が1473世帯。父子世帯は1割ほどと少ない。

 中種子町の大町田勇希さん(38)は、一人で小学校2年生と6歳の子育て中だ。前職は公務員で管理職に就いていた。両親のサポートを受けながら仕事と育児をこなしていたが、残業ができず、出張に行きにくかった。勤め人では子育てとの両立は難しく、自分の能力も十分に発揮できない、と退職。農業を始めた。

 男性のひとり親は少ないため、「同じ境遇の人と出会いにくく、悩みの共有ができない」と課題を感じている。行事や送り迎えなどは母親が担うケースが多く、「『ママ友』といったコミュニティーに入りづらかった」と振り返る。

 最近は“ママ友”も“パパ友”もできた。「ひとり親ではない世帯も子育ての場面に『パパ』がもっと出てくれば、男性のひとり親も孤立しないはず」と願う。

© 株式会社南日本新聞社