アプリで海を管理!?カキ養殖×デジタル技術 50歳でIT導入も…「お金持ちになりたいので(笑)」

デジタルと産業を組み合わせ、地域の発展を目指す取り組みを進めている愛媛県。養殖業では、アプリで水温などを管理し生産性の向上を目指しています。

宇和海に面する愛南町の御荘(みしょう)湾。海や川から流れ込んだプランクトンが豊富で、カキの養殖が盛んに行われています。

ここで、カキ養殖業を営む上甲商会の上甲仁(ひとし)さん。今、デジタル技術を養殖業に取り入れる検証作業が進んでいます。海に沈めたセンサーで、水温などをリアルタイムで測定しているのです。

こちらの漁場では、東京のIT企業が開発したセンサーを導入していて、得られたデータは、タブレットなどでいつでもどこからでも確認することができます。

これまでは、自分の手で確かめたり漁協に聞いたりして水温を確認していたそうですが、センサーでは、水温、塩分濃度、海中に溶けている酸素の量を表す溶存酸素量などが20分おきに測定され、過去のデータも蓄積されます。

上甲商会 上甲仁さん 「例えば水温がドンと上がったりとか酸素濃度が下がったりとかいうのが出てくると、それが死滅する原因になるので、例えば漁場移動とかができるし、それを見落とした場合でもさかのぼって見れるので『これが原因か』と」

また、水温などのデータのほかにも、カキの生育状況などを管理できる別のアプリも活用しています。アプリを開発したのは、徳島県海陽町の水産養殖事業者「リブル」。開発にも携わった中村悠さんは、水産の現場では、漁師の経験や勘に依存している状況が多いと感じていたと話します。

リブル 中村悠さん 「デジタルを使うことによって、感覚に近いものを数値化してデータ化して後世に残してあげることによって、水産業の振興であったりだとか、次の担い手、次の世代に繋いでいくことに取り組めるんじゃないかなと思って今回取り組んでいます」

アプリでは、沖出しの記録や陸揚げの予定なども一目でわかり、作業の効率化が期待されています。

現在50歳の上甲さんが、今回デジタル技術を取り入れた背景にも“次の世代”につなげたいとの思いがありました。

上甲仁さん 「僕の代で終わるのであれば、そこまでデジタルっていうのも疎いですし、本当にやる必要があるのかなっていうところはありました。ただ自分のところの売り上げを上げるため、みたいな感じで始めたんですけど、今の時代、もしくはその先の時代に一番適したやり方ではないかというところもあって、タッグを組んで一緒にやろうと」

デジタル技術の導入で、養殖事業者とアプリの開発者が同じ画面を見ながらコミュニケーションを密にすることで、より良いカキの生産に向けた模索ができるようになったと2人は話します。

上甲仁さん 「自分らが今までやってきたことに対しての『こうだからこうやったんや』っていうことが見えやすくなるというのでは、本当にプラスになっていくかなと思います」

リブル 中村悠さん 「実際どこでも誰でも見れる養殖の現場のデータがあるので、お互いにより良い水産業作りに少しでも寄与できているのかなっていうのは実感はあります」

御荘湾では、20を超える事業者がカキの養殖を手がけていますが、平均年齢は約70歳。デジタルを活用した養殖を知ってもらおうと勉強会も開かれていますが、導入のハードルはそう低くはありません。

上甲仁さん 「やっぱり後継者不足とか環境変化とか、一番問題になるところが問題になっているので、そこをデジタルを活用してどういうふうに跡継ぎであったり、後継者に繋いでいけるかというのを、やっていけるような養殖業にしていけたらなと思います」

全国に誇れる御荘湾のカキ養殖を持続可能な産業へ。“稼ぐ力”の向上にもつながるのか、注目されています。

上甲仁さん 「やっぱりお金持ちになりたいので、それのためにちょっといろいろとわからんこともチャレンジしていけたらと思っています」

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