今季限りで現役引退のマーカス・ダニエルが獲得賞金の50%を寄付!「信じられないほどやりがいのあることだと思う」<SMASH>

現役最後のシーズンを送るニュージーランドのマーカス・ダニエル(複世界ランク1078位)が、今季の賞金の50%を寄付する活動を行なっている。ダブルスを主戦場とする34歳は、日本のベン・マクラクランと組んで「ASBクラシック」(ニュージーランド・オークランド/ATP250)に出場するなど、今季すでに6大会に参戦。未だ勝利はないがグレードの高いグランドスラムやATP1000にも出場しており、賞金として1万5388ドル(約232万円)を獲得済みだ。

ダニエルは男子プロテニス協会(ATP)の公式サイトで活動の意図を語っている。

「この寄付の旅に人々を誘うチャンスがあると思った。でもそのためには、みんなが耳を傾けるような約束が必要だと考えたんだ。50%はちょうどいい数字じゃないかな。僕がどれだけ真剣に取り組んでいるかを理解してもらうには十分だと思う。おそらく今年は儲からないだろうね。でも、その裏で良いことがたくさんあればいいし、信じられないほどやりがいのあることだと思う」

2018年にキャリアハイのダブルス世界34位をマークしたダニエルは、10年に初めてツアー大会のダブルスで優勝を飾り、20年までに5勝を挙げてきた。21年の東京オリンピックの男子ダブルスでは、マイケル・ビーナス(ニュージーランド)と組んで銅メダルに輝いている。
一方で、15年から賞金の一部を慈善団体に寄付し、21年からは生涯を通じて賞金の10%を寄付する活動をスタートさせていた。

また20年には、アスリートを教育して慈善団体につなげようと「ハイ・インパクト・アスリート(HIA)」を設立。既報のとおり、ベン・シェルトン(アメリカ/世界ランク17位)が、23年の「カーボン・トラッカー・リーダーボード」という環境問題に取り組む競争で2位となった際、賞金の3万ドルを寄付した先はダニエルのHIAだった。

HIAでは「世界的な健康と貧困」「動物福祉」「気候変動」の3分野に重点を置き、効果的な活動を行っている12の慈善団体を選んで寄付金を均等に分配しているという。なぜアスリートを教育しようと考えるのか、彼らの活動理念はとても明確だ。

「まず、どこに寄付するかが重要だということ。チャリティの中には、良いことをすることに他より長けた団体があり、そこへ寄付するのは理にかなっている。だから僕たちは、アスリートがそうできるように支援しているんだ。

もう一つは、アスリートには世の中のためになるユニークな力があるということ。なぜなら、たとえアスリートとしての収入が少なくても、知名度が高いため人々はアスリートの話にも耳を傾けるから。アスリートには、良いアイデアを広めるために大きな影響力を持つ、またとない機会があると思う」

“50%の約束”とともに、ダニエルは充実した最後のシーズンを送っているはずだ。

構成●スマッシュ編集部

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