新天地ホーネッツで躍動する“オールドルーキー”ミチッチをデュラントが称賛「頭が切れるし、チャンスを活かす術を知っている」<DUNKSHOOT>

元欧州MVPのセルビア人ガード、ヴァシリエ・ミチッチが、新天地で躍動している。

2月のトレード期間にオクラホマシティ・サンダーからシャーロット・ホーネッツに移籍して以来、コンスタントに2桁得点をマークし、3月9日のブルックリン・ネッツ戦ではNBAで初のダブルダブルを達成(12得点、10アシスト)。

3月には先発に定着し、13日のメンフィス・グリズリーズ戦では自己ベストの25得点に8アシスト、フィールドゴール成功率90%、3ポイントは6本中5本を沈め、ロードでの勝利に大きく貢献した。

「試合のリズムのおかげさ。僕はいつも、できる限り自分らしいプレーをしようと心がけている。うまくいかないこともあるけど、今日はうまくいった」と謙虚に自分のパフォーマンスを振り返ったミチッチ。

ボールがよく回るホーネッツのバスケットが自分にプレースタイルに合っていることも、好パフォーマンスの要因になっていると今年1月で30歳になったオールドルーキーは指摘する。

「僕らのプレースタイルは、動きやパスが多くて自分に合っている。うまくフィットできるよう僕も努力しているところだ。このチームには才能あるスコアラーがたくさんいる。今日は僕が多くの得点をあげることができたけれど、大事なのはベストなポジションでベストなオプションを見つけることだ」
2022年にユーロリーグの年間得点王に輝いているように、もともとミチッチはスコアリング能力の高い選手だったが、それに匹敵するのは彼のゲームメークセンスだ。

ホーネッツのスティーブ・クリフォードHC(ヘッドコーチ)も、彼のバスケットボールIQを評価していた。

「IQ、洞察力、ビジョン…彼はヨーロッパで2年連続MVPに輝いているが、あのポジションでそれをやってのけたこと自体が多くのことを物語っている。サイズもあるし、パスもシュートもできて、頭が良く、ピック&ロールも上手い。

彼は才能ある選手だ。ゲームに対する理解力とセンスは並外れている。まだお互い、知らない点が多々あるが、我々のオフェンスがより組織的になればなるほど、彼のプレーも良くなっていくだろう」

ガード陣の層が厚かったサンダーでは平均12分のプレータイムで、3.3点、2.5アシストにとどまっていたが、ホーネッツでは17試合で平均26.4分コートに立ち、11.9点、5.8アシスト、先発を任された8試合では平均15.8点、フィールドゴール成功率50%の好成績を残している。
3月15日のフェニックス・サンズ戦では、ゲーム最多タイの21得点を奪取。試合後にケビン・デュラントはミチッチについて次のように語った。

「彼はスキルがあるプレーヤーだ。それにガードのプレーをよく理解している。頭が切れるし、チャンスを活かす術を知っている。彼の活躍を嬉しく思うよ」

アメリカ代表歴が長く、世界のバスケシーンをよく知るデュラントらしい言葉だ。試合中には、ゴール下にペネトレイトしたミチッチが、ガードに入ったデュラントを吹き飛ばす場面もあった。
長年サンズでエースを務め、アメリカ代表経験もあるデビン・ブッカーも彼を称賛している。

「ミチッチは素晴らしいプレーをしたが、僕らには予想がついていた。スカウティングレポートでも、彼は最も警戒していた選手の1人だったからね。それでも良いプレーを繰り出されたよ」

もしサンダーに在籍していれば、ルーキーイヤーからプレーオフにも出場できたが、ミチッチは下位チームでも多くの出場機会を得て、自分らしいプレーができる現在の環境を歓迎しているはずだ。

「大事なのはベストなポジションでベストなオプションを見つけること」と本人が語るように、周囲を動かすクレバーなプレーメークに加え、クラッチタイムにはしびれるようなビッグショットを決めて、何度となく欧州のファンを沸かせてきたミチッチ。

欧州屈指の名ガードは、世界最高峰のNBAの舞台でさらなる飛躍を狙う。

文●小川由紀子

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