『アンデッドアンラック』のアニメ演出があまりにも上手すぎる リプトン特別動画も必見

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。3月11日から3月17日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

今週はいろんなアニメがクライマックス的盛り上がりを迎え、いよいよクールの終わりの本格的な到来を感じられました。炎竜とのバトルが見応え抜群だった『ダンジョン飯』、万感の『ドッグシグナル』最終回、そして見事なタイトル回収を見せてくれた『治癒魔法の間違った使い方』……それらに、クールの区切りなんてどこ吹く風といった風情で「メインキャラと同一人物が現る!?」という内容に対し意外過ぎるオチに唸る『ニンジャラ』やインフルエンサー同士の対決を通じて「好き」という感情の強さが描かれた『BEYBLADE X』もあり、神回を紹介する連載を持つ身としては嬉しい悲鳴があがりっぱなしです。

今回は、そうしたクライマックスのなかでも一際気の利いた演出が光った作品の紹介から。

●アニメがあまりにも上手すぎる『アンデッドアンラック』

この『アンデラ』自体は、不死(UNDEAD)の体を持つアンディと肌で触れた者に不運(UNLUCK)を呼ぶ出雲風子というふたりの能力者を中心にしたバトルもので、そのジェットコースター過ぎる物語のスピーディさや壮大さはアニメでも原作マンガのまま。さらにバトル作画を中心にビジュアル的な魅力も高まり、『週刊少年ジャンプ』連載作のなかでも近年屈指のアニメ化として喜んでいるファンも多いはずです。そんな『アンデラ』の今クールのラストを飾るのは、作中世界の大人気作で風子も愛読する『君に伝われ』を描いたマンガ家の安野雲(あんのうん)こと本名・九能明を巡るドラマでした。

以下、重大なネタバレがあります

過去に「UNKNOWN(アンノウン)」の能力が発動したことで自身の言動や行動が周囲に認識されない存在となった彼でしたが、安野雲というペンネームを使うことで『君に伝われ』を通して世界と関われることに。この作品はSF少女マンガですが、実は九能が別の力によって知った世界の顛末(つまり『アンデラ』世界の未来)を示唆する内容になっていました。

この安野の献身の作用で、彼が知っていた「風子が死ぬバッドエンド」を回避することに成功。そして『アンデッドアンラック』の世界は安野が知らない方向に進み始める……というのが今回の話。そして迎えた第24話の次回予告は、これまでと違ってナレーションはナシ。これは第1話からずっとナレーションを務めていた内山夕実さんが安野雲役でもあることを活かし、「ボクの知らない物語」が始まるという演出となっていました。

というのが筆者の認識でしたが、SNSを見るとアニメを通じて視聴者が安野雲=久能明だと知ったため「UNKNOWN」の能力が発動した演出とする説もあるとか。その正確な意図はわかりませんが、ただでさえシビレっぱなしの物語が続くうえに、こんな演出をされたらもう。第20話のアバンを締めくくったナレーションといい、2023年の傑作アニメ『氷剣の魔術師が世界を統べる』に通じるアニメのフォーマットを利用した仕掛けに心が揺さぶられっぱなしです。

●伝説の動画、ふたたび リプトン ミルクティー「恋AI小説」The Movie

このアニメ(?)のすごさについては少し解説が必要かもしれません。森永乳業がリプトンミルクティーの新発売……ならぬ元の味に戻しての”旧発売”に併せて『667通のラブレター』という動画を公開したのが2023年3月のこと。この動画は2分30秒弱と短いわりに驚きと感動必至の内容で、近年の企業PRアニメのなかでは名作中の名作です。現在、残念ながらそちらは公式ではアップされていないようなのですが、それから1年後、またリプトン ミルクティーに関する動画が公開されました。

今回はリプトン ミルクティーから届いたメッセージをAIが並び替えて作った「恋AI小説」を元に、愛飲歴12年の鬼頭明里さんなど同飲料のファンが関わって制作した動画になっています。こちらもまた(前作とはやや方向性が違うものの)驚きの内容で、筆者も動画視聴後、思わずスーパーに走ってしまいました。3分ほどと短いのでその内容はぜひ直接ご覧いただきたいのですが、こうした伏兵的存在も突然現れるエキサイティングな日本のアニメ環境に感謝するばかりです。

(文=はるのおと)

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