「極めて深刻、祖父母世代までしか話せない」消滅の危機・・・独特な方言が残る静岡市の山間部 学者の卵が「井川の言葉」を調査

独特な方言が残る静岡市の山間部で学生たちが現地調査に入りました。消滅の危機を迎えている貴重な方言を残していくための取り組みです。

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<学生>
「ハトは?」
<井川地区の人>
「デデポッポという(呼び名の)ハトもいる」

マイクをつけた高齢者に質問を投げかけ録音する学生たち。これは静岡市葵区の井川地区で行われた方言の聞き取り調査です。話す人が減りつつある井川の方言を残すため、静岡理工科大学と国立国語研究所が調査に乗り出しました。

<静岡理工科大学情報学部 谷口ジョイ准教授>
「井川の方言の研究を80年代から誰もしていないので、記録して保存したいという思いと、言語学を志す学生たちに実地調査の経験をしてもらう」

静岡県の方言を大きく分類すると西部、中部、東部、そして「井川方言」の4つに分かれるとされています。学生たちは独特な井川方言のアクセントなどを丁寧に拾っていきます。

<学生>
「猫が食べるチュウチュウを3回お願いします」
<井川地区の人>
「ネズミ、ネズミ、ネズミ」

<野路毅彦アナウンサー>
「昔の井川の言葉、そのままにお話になっていると思いますが、若い人たちは井川の言葉はそのまま話していますか?」

<井川・小河内地区に住む 望月俊彦さん(86)>
「通用しねーでな、静岡(の街中)で生活してる。親父は何を言っている?子どもらには分からん」

山間部の井川地区は、若い世代の流出が止まらず過疎化が進んでいて、すでに方言が通じなくなりつつあり、消滅の危機を迎えています。

<国立国語研究所 山田真寛准教授>
「極めて深刻と言えますね。子どもたちが話しているのか、その親の世代なのか、その祖父母の世代なのか、曾祖父母の世代なのか、井川は祖父母か曾祖父母(しか話せない)」
Q.話す人を残すには?
「聞いたら分かる人に方言を使う。この人分かんないだろうと思ってもお構いなしにどんどん井川の方言を使う。そうすると聞く機会が増えるので練習になる」

聞き取り調査をした学生たちは、独特な表現に触れ、刺激を受けたようです。

<熊本県立大学4年 米田梨都さん>
「井川地域は無アクセントで興味があってここに来た。経験を積んでうまく対話できないといけないな」

<福岡教育大学2年 増田実桜さん>
「実際の言葉を聞いて、否定するとき、例えば、行かないの意味で『イカノー』って言う人がいた」

本来、方言は、人の寿命も世代も超えて伝わるもの。井川の言葉のユニークさを感じ取った学生達に方言のつなぎ役になれる可能性を感じました。

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