タワーマンションなどでは住んでいる階数で、住人同士のマウント合戦があるという話を聞いたことがある人もいるのでは? 実は、ごく普通のマンションでもマウント合戦が開催されているところもあるようです。今回はマンションの階数で意外なマウンティングをされてしまった経験のある、知人のEさんに聞いたお話です。
マンションに引っ越したら
Eさんは当時、旦那さんと幼稚園に通う子供との3人暮らし。結婚をした当初からコツコツと貯金をして、念願のマンションを購入したばかりでした。
Eさん一家が購入したのは、15階建てマンションの14階。眺望も日当たりも良いので、Eさんは「高かったけど良い買い物だった」とご満悦。
しかも子どもの幼稚園のバスがマンションの前に停まるため、同じマンションのママ友ができるのではないかと期待していました。
そしていよいよ、引っ越してから初めての幼稚園バスのお見送りの日が来ました。
階数を聞かれると……
「おはようございます」
Eさんが子どもを連れてバス停に行くと、もうすでに数組の親子がバスを待っていました。
「おはようございます。最近引っ越してこられたの?」
集まっておしゃべりをしている親子連れの中で、会話の中心になっていたママがEさんに尋ねました。
「そうなんです、先週越してきたばかりで」
「そうなの、これからよろしくね。で、何階?」
どうやらこのあたりのボスママらしいその女性が、いきなりEさんに住んでいる階数を聞いてきたのです。
「14階です」
「ふーん……」
Eさんが答えた瞬間、ボスママは周りのママたちにさっと目くばせをし、その周りにいたママたちの雰囲気が変わりました。
そしてその日からEさんは幼稚園のバス停にいるママ全員に、挨拶をしても無視されるようになってしまったのです。
無視された理由は
「どうして無視するんだろう……」
バス停で無視されるようになってから、Eさんは子どもを自転車や車で幼稚園に送るようにしました。
一体どうして無視されているのかはわかりません。せっかくママ友ができると思ったのに、とEさんは落ち込むばかりでした。
バス停ママたちと顔を合わせないよう、早めに家を出たEさんがエレベーターに乗ると、同じ幼稚園の制服を着た子どもを連れた女性がすでにエレベーターに乗っていました。
「あ、おはようございます」
「おはようございます」
上から来たエレベーターに乗っていたということは、おそらく最上階に住んでいる女性です。
Eさんが住んでいるマンションは階数が上になるほど値段が高く、最上階は特に高級で、部屋数が少なくひとつひとつの部屋が広い造りになっています。
「あの、同じ幼稚園ですよね。バス停で嫌なことありませんでした?」
最上階の女性がEさんに尋ねました。
「はい、何故か無視されて……」
「やっぱり」
話を聞いてみると、やはりその女性もバス停で無視されて自分で幼稚園まで送ることにしたそうでした。
「あのバス停にいる人たち、みんな10階から下に住んでるんですよ。それで、10階以上の人が来たら無視するの。ここって10階以上は結構値段が高かったでしょ? ひがんでるのよ」
「え、階数で人を差別するんですか?」
「そう、幼稚園のママは低層階の人が多いから、向こうは数で勝負してるの」
マンションの階数で人を差別するなど、タワマンだけの話だと思っていたEさんはびっくり。こんなに普通のマンションでもそんなことがあるなんて思いもしませんでした。
「しかも低い方が無視するって、逆マウントだよね」
最上階の女性はそう言って笑いました。
「10階以上に住んでるママが集まってる場所があるから来ない?」
「行きます!」
10階以上のママが集まっている場所に案内され、Eさんは無事にそこでママ友を作ることができました。
なおバス停のママたちは子どもを見送った後もバス停でずっと立ち話をしていたため、他の住民から幼稚園にクレームが入り、バス停がマンションの前から少し離れた場所に移動になったそうです。
マンションの階数で逆マウントをとるとは。羨ましい気持ちもわかりますが、それが人を無視していい理由にはなりません。人はどんなところでマウントを取られるかわかりませんね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子