ブレーメンで研鑽を積む日々。“10番”佐藤恵允はテクニックの向上に自負「より繊細にボールを扱えるようになった」【U-23代表】

もっと強く、もっと巧く――。明治大サッカー部を退部し、ドイツに渡って9か月。ブレーメンに加入した男は、一回りも二回りも成長して代表に戻ってきた。

パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップ前最後の活動を行なっているU-23日本代表が20日、京都市内でトレーニングを実施。3月22日に行なわれるマリとの国際親善試合に向けて調整を進めている。25日にはウクライナと対戦する。

20日のトレーニングでは、体調不良で不在の荒木遼太郎(FC東京)を除く25名の選手がグラウンドに姿を見せるなか、充実した表情で汗を流した選手がいる。佐藤恵允だ。

4月のU-23アジア杯はインターナショナルウィーク外の開催となるため、海外組の参加が不透明。そのため、今回の活動では出場の可能性が高い選手を招集した一方、大岩ジャパンで10番を背負った経験を持つ鈴木唯人(ブレンビー)や斉藤光毅(スパルタ)がリストから漏れた。代わりにエースナンバーを背負う選手に注目が集まるなかで、新たにナンバーテンを託されたのが佐藤だ。

「明治大で10番を初めて付けた時に近い感覚。10番は華のある番号なので、サッカーを初めて見る人であれば、どんなチームかなと思って、まずは10番を最初に見る人が多い。そういう番号なので、10番に恥じないようにプレーしないといけない」

初めて日の丸の10番を背負う心境を冷静な言葉で紡いだが、伝えられた際は驚きを隠せなかったという。それもそのはずだ。2022年3月のチーム発足当初はボーダーライン上の選手だったからだ。

同年6月のU-23アジア杯も追加招集での参加で、絶対的な存在ではなかった。しかし、徐々に代表での序列を上げ、当時所属していた明治大でも目覚ましいプレーを披露。大学4年だった昨夏にサッカー部を退部して渡独し、現在はブレーメンのトップチームで練習を積みながら、セカンドチームで出場機会を得ている。

今回のメンバーを見れば、佐藤が10番を付けて然るべきだろう。実力面でもヨーロッパに渡ってからバージョンアップを果たしており、異論はない。

【PHOTO】マリ&ウクライナとの国際親善試合に挑むU-23日本代表招集メンバーを一挙紹介!

海外に渡ってから、とりわけ向上したのが技術面だという。本人はその経緯をこう話す。

「フィジカル面もアジリティも良くなったけど、具合的に言うと、一番はテクニック面だと思います。海外の選手と対峙すると、ボールの置き所が悪ければ、一瞬で寄せられてしまうんです。海外に渡ってからすぐにそういうのを感じたので、ブレーメンでトレーニングを積むなかで置き所はすごく良くなった。より繊細にボールを扱えるようになったと思います」

もちろん、ブレーメンでプレーする前から技術面の差は感じていた。大岩ジャパンで何度も海外遠征を行ない、その度に改善すべき課題だと痛感していたという。

しかし、大学に戻れば、そうした差を感じるのは難しくなる。そして、忘れた頃に再び海外遠征に赴き、また気づかされる。その繰り返しだった。

「海外で試合をすれば、もちろん気がついていた。でも、遠征に行っても2試合だけ。でも、海外に行って(試合だけではなく)練習からやり続けることでより感じられた。所属はセカンドチームだけど、練習はトップチームでやっているので、そのレベルの選手の強度でできるのは大きい」

そうした積み重ねが成長に結びつき、出場機会こそ得られていないが、トップチームでのベンチ入りにも繋がった。

異国の地で磨いた技がどこまで通用するのか。自分の選んだ道が正解だったことを示すためにも、今回の親善試合は重要な場となる。パワフルな突破に繊細さが加わった佐藤のプレーから目が離せない。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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