科学わくわくクラブ NPO法人に 科学好き育成へ体制充実

瀬崎さん(左)の指導で科学実験を楽しむ子どもたち

 子どもの理科離れを食い止めようと、実験や観察、工作など多彩な講座を開いて活動してきた放送大学岡山学習センター(岡山市北区津島中)の公認サークル「科学わくわくクラブ」は今春、NPO法人化を図り新たな組織として再出発する。クラブは元大学教授や研究者が講師となり、学校で学ばないような体験ができるとあって、子どもたちに根強い人気だ。ただ、設立12年を迎え、初期からの講師の高齢化や数の減少など、運営には危機感も。活動の意義や今後の展望を追った。

 人と科学の未来館サイピア(同市北区伊島町)で9日行われた「電気と磁気の話」のイベント。親子連れら約30人が参加した。磁力を利用し鉄球を発射する「ガウス加速器」実験では、想像を超えた速さで飛び出す鉄球に驚いた子どもの歓声が上がった。同市立竜之口小1年の男児(7)は「じっくり時間をかけて実験が見られて楽しい。科学が好きになった」と笑顔を見せた。

延べ1万人以上

 クラブは2012年、かつて日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)研究員だった瀬崎勝二代表(80)=同市北区=が設立。東日本大震災時、原子力への誤解が広まる様子を見た瀬崎代表は「科学的知識に基づいて冷静に対応できる人を育成したい」と決心。家族が住む岡山に移住後、放送大学を利用する有志らとクラブを立ち上げた。

 初期メンバーには大学教授が多く、化学や物理といった得意分野を生かして岡山、倉敷市内を中心に年40回ほど出前講座を開く。セミの解剖、滞空時間の長い紙飛行機の作り方など、子どもが喜びそうなテーマを選択。学習支援用動画も制作した。これまで講座に参加した子どもは延べ1万人以上。受講するうち、進路に理系を選んだ子どもも多いという。

 サイピアの糸山嘉彦サイエンスインストラクター(63)は「実験、体験することで、子どもの科学への興味関心は大きく高まる。岡山の科学力の裾野は確実に広がった」と評価している。

国支える人材を

 長年中心となってクラブを支えてきた瀬崎代表だが、自身も高齢となり、ピーク時に50人ほどいたメンバーも約30人に。講座もクラブで教材などを準備してきたが、「末永く活動を続けていくためにも、しっかりとした組織が必要」(瀬崎代表)とし、NPO法人化を申請した。4月に認可予定で、代表も元会社役員で長年天文学を学んできた三宅美郷さん(63)に引き継ぐ。

 NPO認可を機に、放送大学のメンバーに限られていた講師を岡山県内全域から募ることができるようになる。持ち出しが多かった活動資金も助成金が受けやすくなり、解決が見込めるという。活動エリアの拡大も予定している。三宅さんは「研究成果を、若者に還元することが科学者の使命。科学的な考え方を持った国を支える人材を育て続けていきたい」と意気込んでいる。

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