秋田、新スタジアム情報・建設候補地まとめ(ブラウブリッツ秋田 ホームスタジアム)

秋田県秋田市での整備が計画されているブラウブリッツ秋田の新スタジアムに関する情報をまとめています。

「秋田 新スタジアム」概要

2014年にJリーグへ参入し、明治安田J2リーグで4シーズン目を迎えているブラウブリッツ秋田。JFL時代は秋田県内のいくつかのスタジアムを渡り歩いていたが、J参入以降は秋田市中心部にある八橋運動公園内のスタジアムをホームとして使用している。

以前主に使用していたのは旧あきぎんスタジアム(秋田市八橋運動公園球技場。現在の呼称は秋田スポーツPLUS・ASPスタジアム)。ただ、4,992人という収容人数など設備面がJ2クラブライセンスの基準を満たさないため、秋田は2019年から同じ八橋運動公園内にある陸上競技場のソユースタジアムでホーム全試合を開催している。

というのも、秋田は2017シーズン、劇的な逆転劇でJ3初優勝を飾りながら、J2クラブライセンスの不交付により昇格を果たせなかった悔しい経験を持つ。

当時、秋田県を中心に将来的なサッカー専用スタジアム建設を見据えた「スタジ アム整備のあり方検討委員会」が設置されており、スタジアム問題の解決に向けて動き出してはいたが、クラブの成長にそれが追いつかなかったのだった…。

検討委員会は2018年1月に報告書を提出。しかし、現在も秋田県知事を務める佐竹敬久氏が新スタジアム整備の費用面や報告書の提言にあった「全天候対応の開閉式ドーム」に対する技術面の課題から難色を示し、暫定的な措置として秋田市がソユースタジアムの大規模改修を実施することになった。

大型映像装置と夜間照明装置の新設などでソユースタジアムがJ2基準を満たす見込みが立ったことから、秋田は2019年からJ2クラブライセンスを取得。そして2020年、優勝決定まで無敗という快挙で念願のJ2昇格を成し遂げている。

2021年にはJ1クラブライセンスの申請を行い、Jリーグへ改善計画に関しての書面提出を求められる制裁付きながら承認された。

一方で、ソユースタジアムはJリーグライセンスのB等級基準(屋根のカバー率やトイレの数等)を満たしておらず。鹿児島のケースと同様、県と市が新スタジアム整備の計画を進めることを前提に付与されたJ2クラブライセンスだったためそちらの議論も並行して行われてきた。

その中で、3つの候補地について具体的に検討されたが、2020年2月、秋田県と秋田市による「新スタジアム整備に向けた諸課題の調査・研究について(最終報告)」において、いずれも整備は困難とされた。検討結果を引用する形で簡潔に紹介する。

八橋運動公園

【検討結果】
第2球技場と健康広場の代替地に関し、県が案を提示し、八橋運動公園の設置者である秋田市が提案に対する考え方を示すという手法で検討を重ねたが、いずれの案も秋田市が求める条件を満たさず、現実的な解決策を見出すことはできなかった。
県・市とも、さらなる代替地の案はなく、課題解決の見通しがないことから、当地への整備は困難である。

秋田プライウッド敷地

【検討結果】
課題とされている津波等の浸水に関しては、一定の対策により防災拠点としての活用は可能と考えられるものの、当地周辺は津波浸水想定区域となっており、当地を含めた土地を安定的に確保し、防災対策を含めて施設を整備する場合は、相当の費用負担と期間が必要となることから、当地への整備は困難である。

秋田大学敷地

【検討結果】
当地はJ2基準のスタジアムであっても、秋田大学の陸上競技場周辺において更なる敷地を確保できる見込みがなく、スタジアム周辺の観客の待機スペースやアクセスルートの確保などに解消しがたい課題を抱えていることから、当地への整備は困難である。

3つの候補地の中では八橋運動公園を推す声が最も多く、県もそこでの整備を目指し動いたが、使用できなくなる第2球技場と健康広場の代替地選定で難航。いくつもの候補地を提案するも八橋運動公園を管理する秋田市の賛同を得られず、結局同公園内での整備は困難と判断された。

ここまでの議論は基本的に秋田県を主体に行われてきたが、2020年に発生した新型コロナウィルスの影響により税収減少が見込まれることから、県の新スタジアム整備に対する姿勢はこの年を境にトーンダウン。

そうしたなかで、秋田市の穂積志市長のもと2020年頃より現在に至るまで進められているのが、市中心部から北3kmほどの外旭川地区にある秋田市卸売市場跡地でのスタジアム整備だ。

場所はここ。

秋田市卸売市場に加え、東側や市道金足添川線を挟んだ北側に広がる農地も含めた一体的開発となる。ちなみに、最寄りのJR泉外旭川駅は2021年3月に開業した新駅。地域の発展や人口増加が見込まれる地域として、秋田市が総事業費およそ20億7,300万円を全額負担する請願駅として誕生した。

秋田市は老朽化した市卸売市場の建て替えに合わせ、ブラウブリッツ秋田の新スタジアム、さらには先端技術を活用して相乗効果が期待できる民間施設を整備するまちづくりを目指し、2022年1月から事業パートナーを公募。同年3月、イオンタウンが最優秀提案者に選ばれた。

同社の構想では、屋根付きのスタジアムとともに天然芝の可動式ピッチを採用。サッカーの試合がないときは他の用途に使える次世代型スタジアムとなっていた。

この「外旭川地区まちづくり構想」が新スタジアム整備の突破口になることが大いに期待されたものの、佐竹知事は当初から市の計画を疑問視。整備費用に対する懸念のほか、建設予定地の農地が軟弱地盤であるとし、地盤改良してスタジアムを建設するとなれば多額の費用と時間を擁する点を指摘した。

再び壁が立ちはだかった2023年の5月、Jリーグはブラウブリッツ秋田へ新スタジアム整備に関する状況確認の旨を通達。J2クラブライセンスの交付から5年が経過しながら、新スタジアムに関する基本計画すら策定がされていないことを危惧し、J1及びJ2のクラブライセンス不交付の可能性を示唆した。

こうした状況を受けて、秋田市は外旭川の新スタジアムを農地ではなく、建て替えを進める卸売市場の余剰地である市の土地に建設することを表明。また、屋根で覆う範囲を観客席のみに縮小し、可動式ピッチを採用しないことにより、イオンタウンの計画にあったスタジアム整備費用143億円を90億円まで圧縮している(収容人数は1万人規模)。

ただこの場合、卸売市場の建て替え完了後、2030年6月以降に着工する可能性が高く、スタジアムの完成は2032年までずれ込む可能性がある。ブラウブリッツ秋田は「2026年度着工」を前提としてJ1ライセンスを取得しているため、Jリーグからはすでに「非常に厳しい見方をせざるをえない」という話があったと秋田の岩瀨浩介社長は明かしている。

また、佐竹知事はスタジアム整備を含む「外旭川地区まちづくり構想」に対して否定的な姿勢を崩しておらず、計画を進めるための手続きは難航中。穂積市長が考えていた今年3月末までの基本計画策定は絶望的な状況だ。

鹿児島、新スタジアム情報・建設候補地まとめ(鹿児島ユナイテッドFC ホームスタジアム)

県が進めてきた計画は市によって否定され、市が進める計画は県によって否定される―。ともに4選の知事と市長の間で、秋田の新スタジアム問題は揺れ続けている。

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