「軍艦島(端島)を忘れないで」~亡き妻に贈る 第5話~

在りし日の軍艦島

桜待つ日の

軍艦島には桜の花はない

緑なき島に与えられた使命は

石炭を掘るだけの

人工的な島の運命である

緑よりも生産優先

生きる意味より生かされる意味

が優先されたから

過去と今をつなぐベルトコンベア

緑なき島には今は緑は一杯で

廃墟になったけど

永遠にこの島には春の桜は咲かない

春の便りを端島にしたためても

帰ってくるやさしさはすでにない

語り部・・・身体が動く限り

ガイドをする筆者

悲しいくらいに身体が動かない日にはあの日の語り部の姿を思い浮かべる。辛い3年半は身体との闘いであったが、誰にもひとつ、ふたつの病はある。負けまいと頑張っている。人の言葉が背中を押してくれるが、いつの日にかまたこの場所に立てるのか。

まだ未知数の姿に毎日ジレンマを持ちながらも。。。リハビリに明日の語り部を夢みている。そんな3年半であった。軍艦島ツアーは盛況に開始されたが。次のデビューはいつだろうか。身体は動かないが心は動いている。

まだ少し時間が必要かもしれない。まだまだ端島(軍艦島)を語り続けなければ廃墟だけの島になる。観光地にも生きた証を残すためにも。

歩いてきた時間の寂しさが

亡き妻に捧ぐ、想い出のコスモス畑

明日の一歩の勇気を

躊躇する時間だった

明日晴れたら

旅立った妻に

「母さん」愛してたよと

照れながら言いたい

春が似合う母さんに。

(つづく)

これまでの寄稿は、こちらから(https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=21)

寄稿者 坂本道徳(さかもと・どうとく) NPO法人 軍艦島を世界遺産にする会 理事長

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