[社説]訓練場設置で市民決起 計画断念を強く求める

 うるま市の石川会館が満杯になったのは、NHKのど自慢と地元出身の民謡グループ・フォーシスターズによるコンサートの2回。主催者は「今度の集会を3度目の満杯にしたい」と意気込み、準備に奔走した。

 集会の会場となった石川会館には20日、集会の始まる1時間も前から次々に参加者が訪れた。

 開始直後には早くもホールが満席に。その数1200人以上(主催者発表)。

 うるま市石川のゴルフ場跡地への陸自訓練場設置計画の断念を求める市民団体は、この問題が表面化して以来初めて市民集会を開き、計画の断念を求める決議を採択した。

 党派を超え世代を超えて、これほど多くの人たちが集まったのは、計画の一方的な押し付けに対する反発と、「緑豊かな生活環境を守ろう」という訴えが幅広い共感を呼んだからだ。

 登壇した各団体代表は、口々に計画の無謀さを指摘した。

 石川岳は全国森林浴の森100選に選ばれた緑豊かな山で、その麓にある県立石川青少年の家は宿泊研修やキャンプ、登山、ナイトウオークなどに幅広く利用されている。

 青少年の家と予定地との距離は15メートルから20メートル程度。宿泊棟と予定地との距離もおよそ60メートルしか離れていない。

 市民集会で改めて浮かび上がったのは、地域の生活環境や自然環境を無視した訓練場設置計画のずさんさである。 防衛省は直ちに計画を断念すべきだ。

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 2005年に具志川市、石川市、勝連町、与那城町の2市2町が合併しうるま市が誕生して以来、地域ぐるみの大規模な市民集会が開かれるのは初めてである。

 防衛省は、ここまで反対の声が広がるとは想像していなかったかもしれない。

 ゴルフ場跡地を選んだ理由として防衛省は「利便性が高い」ことや「那覇駐屯地や勝連分屯地からのアクセスが良好」なことを挙げていた。

 その地で暮らす人々のことを何も考えていなかったのである。

 中村正人市長はあいさつで白紙撤回を求め、玉城デニー知事もメッセージを寄せ、白紙撤回を求めた。

 市議会は19日、計画の断念を求める意見書を全会一致(賛成25、退席3)で可決した。県議会も全会一致で白紙撤回を可決している。

 自民党県連の島袋大幹事長は、国会内で木原稔防衛相に会い、計画の白紙撤回を求めた。

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 市と市議会、県と県議会、市民集会が足並みをそろえて計画の白紙撤回や断念を求めているのである。

 木原防衛相は島袋幹事長の要請に対し「重く受け止める」と答え、白紙撤回には踏み込んでいない。

 だが、ここまでくると、もはや小手先の見直しで済む話ではなくなった。

 うるま市の勝連分屯地には新たに地対艦誘導弾(ミサイル)の部隊が配備された。

 この上、民意に反して訓練場設置を強行することは許されない。

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