中村倫也が『ブギウギ』をさらに盛り上げる 「トップコート」俳優と朝ドラの相性の良さ

放送中の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)での中村倫也の登場が話題である。

彼が演じるのは、スズ子(趣里)が出演予定の歌番組『オールスター男女歌合戦』のディレクター・沼袋勉。業界人然とした風貌もさることながら、しゃべり方から振る舞いまで、そのすべてが強い個性を持ったキャラクターだ。『ブギウギ』の世界観に登場するなり場をさらい、物語が新展開へと進むのを促す役割を担っている。

中村が朝ドラに登場するのはこれが三度目のこと。俳優デビューを果たして間もない2005年から2006年にかけて放送された『風のハルカ』でヒロインの従兄弟である神崎由起夫という主要キャラクターのひとりを演じ、2018年放送の『半分、青い。』で“マアくん”こと朝井正人を演じたことで一気に名を揚げ、その力を世に知らしめた。それからというもの、映画にドラマに舞台にと、出演作が絶えないのは誰もがご存知のとおりだ。

過去の2作では穏やかな青年に扮していたが、今回は打って変わってクセの強い豪快なキャラクターに。いきなり冗談を言っては、「ガハハ!」とひとりで声を上げて笑っているような男だ。中村の発するセリフには独特のテンポとリズムがあり、登場するなりシーンの空気を一変させてしまう。それはまさに“場をさらう”といえるもの。この“沼袋勉=中村倫也”の登場は事前にアナウンスされていなかったため、多くの視聴者が驚嘆の声を上げることになったしだいだ。『ブギウギ』制作サイドの非常にパンチの効いた演出である。

とはいえ、ここで中村が空振りしたり、視聴者を置いていくようなことには一切なっていない。そこは彼のキャリアと実力に拠るところが大きいのはもちろんだが、やはりその演技を受ける趣里のパフォーマンスによって、シーンとして成立しているというべきだろう。中村の生み出した空気を、座長である彼女がきっちり回収したのだ。観ていて思わず唸った。そんなふたりには共通点がある。所属している事務所がともに「トップコート」なのだ。

この「トップコート」の所属俳優といえば、スズ子のマネージャーの“ター坊”こと柴本タケシ役として三浦獠太が『ブギウギ』に出演中。そのお調子者なキャラクターが広く愛されているところだ。清野菜名は中村と同じく『半分、青い。』への出演を機にさらに活躍の場を広げた印象があるし、山時聡真と萩原利久は2020年放送の『エール』に出演し、短い出番ながらも作品が世に出ていくことに貢献した。私たちがコロナ禍に翻弄された一年目の年ということもあって、彼らの好演ぶりはとても印象に残っている。

それに杏は2013年から2014年にかけて放送された『ごちそうさん』で主演を務めているし、そこで息子を演じた菅田将暉は『まんぷく』にも出演。出番はかぎられたものだったが、主人公たちの未来を左右する重要な役どころを担っていた。松坂桃李も『わろてんか』でヒロインのパートナー役を務めている。

粒揃いの事務所ということで、所属する俳優の誰かしらがつねに朝ドラに出演している印象がある。俳優は固有の人格を持った独立した存在だが、同時に所属事務所のカラーを体現する存在でもある。ひとりの俳優がいい仕事をすれば、自然と次の俳優へとバトンが渡っていくのだろう。さて、『ブギウギ』はすでに佳境だが、中村倫也の登場によってもうひと盛り上がりしそうである。

そして今後の朝ドラには「トップコート」から誰が参加していくのだろうか。個人的には杉野遥亮や夏子にそろそろ登場してほしいところ。白鳥玉季はいずれヒロインを務めることになりそうな気がしている。

(文=折田侑駿)

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