相手に共感を求められて困ったとき、どんな返事をすればよいのでしょうか。本稿では、齋藤孝氏の著書『「表現力」に差がつく!12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、「コミュニケーション力がアップする言い換え術」を紹介します。子どものみならず、大人の表現力やコミュニケーション力の向上にも役立つ内容です。
友達に同意を求められたけれど、共感できなくて困った
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<シチュエーション>
イヌさんはネコさんと好みが合わないことがあります。無理に合わせるのもモヤモヤするし、否定するのもネコさんに悪い。どう反応したらいいのかいつも困っています。
今日もネコさんが「カワイイでしょ?」と同意を求めるので、「そうかなあ」とあいまいな返事をしてしまいました。
気まずいイヌさんは話題を変えたいのですが、どう言えばいいかわかりません。イヌさんの反応を「考え中」だと思ったネコさんは、「なぜかわいいか」「どこがかわいいか」を語り始めました。
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[図表1]友達に同意を求められたけれど、共感できなくて困った① イラスト:森のくじら
出所:齋藤孝著『「表現力」に差がつく!12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)
[図表2]友達に同意を求められたけれど、共感できなくて困った② イラスト:森のくじら
出所:齋藤孝著『「表現力」に差がつく!12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)
【解説】
「あなたもそう思うでしょ?」と、相手が自分と同じ気持ちや考えであると確認することを「同意を求める」と言うよ。でも、「ちょっと違うなあ」「ぜんぜんわからない」と思っている時にそう聞かれるとちょっと困るね。否定したくはないけれど、あやふやな返事だと、「わかってくれそう」と期待されてしまうかも。
言い換えのコツ
①自分の意見を伝えよう
⇒相手の意見とは違うけれど、自分もポジティブな意見の時は、それを伝えてみよう。逆の考えの時はあえて言わなくてもいいよ(図表3)。
[図表3]自分の意見を伝えよう! イラスト:森のくじら
出所:齋藤孝著『「表現力」に差がつく!12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)
②話題を変える提案をしてみよう
⇒この話題は苦手だなと思ったら、思い切って話を変えてみよう。「そういえば」「それなら」といった言葉をはさむと自然だよ。
[図表4]話題を変える提案をしてみよう イラスト:森のくじら
出所:齋藤孝著『「表現力」に差がつく!12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)
意見の違いをはっきりさせなくてもいい
お互いの意見を伝え合ったり、同じ気持ちであることを確認したり、なんでも言い合える関係をつくることはとても大切なことだよ。
でも、自分の考えや気持ちを押しつけたり、無理に同意を求めるのは良くないよね。それに、相手との価値観の違いを気にして言い合いになったり、逆に合わせすぎるのもきゅうくつだ。
将来、メールを送り合ったときには、文字だけで気持ちを伝える難しさも出てくるよ。ちょっとした冗談のつもりでも、相手が誤解したり、周囲があなたの発言を広めてしまうこともあるかもしれない。
意見や考えが違うなら、そのままにしてもOK。無理に反応せず、いろいろな話題の中から、お互いに「好きなもの」や「楽しいこと」が見つかるはずだ。違いばかりに目を向けるのではなく、共通点を見つけることも大切だよ。
齋藤 孝
明治大学文学部教授
1960年静岡県生まれ。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書に『語彙力こそが教養である』『小学3年生から始める! こども語彙力1200』(いずれもKADOKAWA)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)、訳書に『現代語訳 論語』(ちくま新書)、『12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』『12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』『12歳までに知っておきたい読解力図鑑』(いずれも日本能率協会マネジメントセンター)など多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。