聞いたらバカにされる、恥ずかしい…。「できないことを隠す子どもたち」に共通すること|発達脳科学者 成田奈緒子先生

「子どもの脳を育てる」と聞くと、特別な教材やプログラムに取り組むことがイメージされるかもしれません。小児科医で発達脳科学者の成田奈緒子先生は、そんな「育脳」のイメージを一刀両断。子どもの脳がすくすくと育っていくために、親が意識したいこと、気をつけなければいけないことを伺います。

子どもの脳は「自然の中のちょっと危ない体験」で育つ

ちょっと危ない体験は、五感を刺激し、原始的な脳を育てるのにうってつけです。

木から落ちそうになったら枝をつかむ。転ぶときにはさっと両手を出して受け身をとる。熱かったら手を引っ込める。

自然体験や野外での遊びが子どもにとって大切なのは、こうした「ちょっと危ない体験」がたくさんできるからでもあります。

「こらえる」「見守る」が親のがんばりどころ

ただ、そんな子どもの姿は、親にとってはヒヤヒヤするもの。「危ない!」「やめなさい」と言いたくなることもあるでしょう。

その気持ちをぐっとこらえて、見守ること。ここが、親のがんばりどころだと思います。

子育てには心配がつきません。子どもが安全に、間違いなく進めるようにと先回りしたくなる気持ちもよくわかります。しかし、その先回りは、言葉を変えると「過干渉」に。

そして、いつも心配している親は、言葉を返せば、子どもを信頼できていない親でもあります。

過度な心配は子どもの脳の育ちを妨げ、さらには親子の信頼関係にも影響が。

リスクを背負う覚悟をもって

親は、子どもが小学校を卒業するまでに「心配半分、信頼半分」の割合に持っていくことを目標に、心配を信頼に変える作業を重ねていきましょう。

そのためには、親自身がリスクを背負う覚悟を持つことが大事です。

ふだんの生活の中でも、一人で買い物に行かせたら、赤信号で歩道を渡ってしまうかもしれない。渡したお金を落とすかもしれない。

親が手を離せば、いろいろな失敗が起こり得ます。そのリスクを全部ひっかぶる覚悟で、子どもを一人で送り出す。

たとえ失敗したとしても、命がなくならない程度の失敗であれば、もう一度チャレンジさせる。

それを何度か繰り返したとき、はじめて子どもは「自分でできた!」と自信を持ち、親も「この子は大丈夫」と信頼感が増します。

親からの信頼は子どもの自信につながる

「自分は大丈夫!」という自己肯定感がベースにある子は、困難にぶつかったときには「助けてください」「わかりません」とヘルプを求めることができます。

一方、いつも心配され、親が先回りしている子は、「自分はできる」と思える体験をしていないので、自分に自信が持てなくなります。

「こんなことを聞いたらバカにされるんじゃないか」「怒られるんじゃないか」という不安が先に立ち、自分ができないことを隠そうとします。

親が子どもを信頼し、少しずつ手を離していけば、子どもは自分の力ですくすくと伸びていくものなのです。

大人も「原始的な脳」を頑丈に

リスクも覚悟のうえで子どもにチャレンジさせるには、まず親の心身が安定していなければなりません。

親が寝不足で食事もままならない状態では、イライラするし、ちょっとしたことにも不安がつのるものです。

つまり、子どもの脳をすこやかに育てるには、親も「原始的な脳」を鍛えることが大切。

大人も朝日を浴びて起き、朝ごはんをしっかり食べて、夜は日付けが変わらないうちに眠りましょう。

原始的な脳は、不安や怒りなどの感情もつかさどっていますから、原始的な脳が頑丈にできていれば、不安への対処も上手になります。

家庭で育てるのは、その子が一生幸せに生き抜いていく力

できないことがあれば助けを求め、心からの感謝を伝えられたなら、周囲に愛され、良好な人間関係を築けるでしょう。

家庭で育てるのは、その子が一生幸せに生き抜いていく力です。五感を刺激し、原始的な脳を育てることにだけ注力すれば、子どもはうまく育ちます。

あとは、ぐっとおなかに力を入れて、我が子を信頼すること。しなくていいことはしない。

これが、子どもの脳をすこやかに育てるための大事な大事なポイントです。

成田奈緒子(なりた・なおこ)●小児科医、発達脳科学者。文教大学教育学部特別支援教育専修教授。神戸大学医学部を卒業後、米国セントルイス大学医学部留学、獨協医科大学越谷病院小児科助手、筑波大学基礎医学系講師を経て現職。「子育て科学アクシス」主宰。

取材・文/浦上藍子

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