野口千円札...名残惜しい 交代まで3カ月、猪苗代で功績を発信

野口千円札2号券について解説する学芸課長の森田さん。会場には北里と野口のパネルも展示している=猪苗代町・野口英世記念館

 千円札の顔が7月3日、野口英世から北里柴三郎に変わる。紙幣デザインの刷新は2004年以来、約20年ぶり。長年親しまれてきた野口千円札の終了に、生誕の地である猪苗代町内からは「野口博士のお札がなくなるのは寂しい」との声も聞かれる。ただ、来年以降に英世に関する記念の年が続くことから好機と捉え、英世の業績をこれまで以上に発信しようと準備を進める機運も高まっている。

 「お札に顔が描かれている存在感はとてつもなく大きい。それがなくなるのは正直寂しい」。町内にある野口英世記念館で学芸課長を務める森田鉄平さん(48)はこう話しながら「英世の業績を後世に伝える使命は今後も変わらない。県外の巡回展もどんどん企画するなど、これまで以上に業績の発信に努めたい」と力を込める。

 新しい千円札の顔となる北里は英世と同じ細菌学者であり、英世の恩師だった縁もある。顔の交代まで約3カ月となる中、記念館は20日、館内の一角を使って企画展「野口英世と恩師北里柴三郎の絆」を始めた。

 2人の深いつながりが伝わるような資料やパネルを展示していく考えだ。企画展の目玉は野口千円札の「2号券」。会場正面の最も目立つケースに飾られている。

 04年に新千円札として発行された記念に、日本銀行から記念館に寄贈された。森田さんは「7月3日には北里の新千円札が届くと思うので、野口2号券の隣に並べて一緒に展示したい」と話す。

 町内の団体も盛り上げに一役買おうと、動いている。歴史研究団体「猪苗代の偉人を考える会」は、野口千円札の終了を記念した展覧会や講演会を7月中旬ごろに計画している。「町内ゆかりのエピソードにテーマを絞った展覧会にしたい」と会長の小檜山六郎さん(77)は話す。

 野口千円札が始まった04年当時、小檜山さんは野口英世記念館で学芸課長だった。「お札の顔に選ばれるまで博士の名前は知っていても地元がどこなのかまでを知る人は少なかった」と振り返る。「それから20年が過ぎて地元のこともやっと認知してもらえるようになったのに、顔と名前を知ってもらうきっかけがなくなるのは残念だ」

 一方で、今後しばらくは英世に関する記念の年が続く。来年は母との再会のため帰国して110年、26年は生誕150年、28年は没後100年を迎え、周年に合わせた企画で全国にアピールできる絶好の機会になる。小檜山さんは「今年からの数年間は私の最後の務めだと思い、野口博士のイベントを盛り上げることに力を尽くしたい」と意気込んでいる。

© 福島民友新聞株式会社