米金利の長期見通し上振れ、パウエル氏は先行き「多大な不確実性」と指摘

Michael S. Derby

[ワシントン 20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が20日の連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に公表した政策金利の長期見通し中央値は、昨年12月時点の2.5%から2.6%に切り上がった。これは過去5年のほとんどの期間推移してきた水準よりも高い。

ただパウエル議長はこの日の会見で、常に金利が上昇する時代の到来が必ずしも告げられたわけではないと慎重な見方を示した。

政策金利の長期見通しは、新型コロナウイルスのパンデミック前までは一貫して下振れ傾向をたどり、超低金利とずっと弱いままの物価上昇率が長らく続いたことを物語っていた。

しかし少なくともこの1年で、FOMCメンバーの認識は徐々に変化してきている。今回、長期の中立金利を最低でも2.9%とみなしたメンバーは7人だが、1年前に3人だ。

それでもパウエル氏は、金利が2020年春のパンデミック開始前に浸透していた超低水準に回帰するとは思わないとしつつも、長期的な金利水準が最終的にどの地点に収まるのかについては「多大な不確実性」があると語り、早急な結論を下さないようくぎを刺した。

ここ数カ月でFRBや民間エコノミストの間では、パンデミック以前の超低金利局面が本当に幕を下ろしたのかどうかを巡る議論が活発化しており、経済や財政が持続的に拡張する構造変化が起きた以上、もう長い超低金利時代には戻れないとの意見も出ている。

メットライフ・インベストメントのグローバル経済市場戦略ディレクター、タニ・フクイ氏は、政策金利の長期見通し変化はかなり重大だと指摘。「その意味することの一つは、今の金利環境はFRBが思っているほど引き締め的でない」という事実で、これは米経済が急激な利上げでも想定ほど減速しない理由かもしれないとみている。

また同氏によると、FRBがそれほど大幅に利下げしなくても緩和的なポジションに到達することにもつながるという。

一方INGのチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は、主に財政政策が拡張的なことから、政策金利の長期見通しは最終的に3%まで上昇するとみている。

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