1400万円もの被害が!! やっぱり……マイナカード詐欺の最新手口

(写真:C-geo/PIXTA)

とうとう、マイナンバーカード(以下、マイナカード)の情報を悪用した高額詐欺事件が発生した。

北海道警によると、被害に遭ったのは札幌市に住む70代の女性。1月中旬「総合通信局」職員や警察官を名乗る詐欺師から「口座情報が流出した」と電話が入った。被害女性は、指示されるままスマホのビデオ通話に応じて、マイナカードを見せたという。

「詐欺師は、映像を基にマイナカードを偽造したのではないかと思います」

そう指摘するのは詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明さん。偽造マイナカードを身分証明証として使い、ネット銀行の口座を開設したのだろうと言う。

その後「口座が凍結される」と聞いた被害女性は、2月28日、約1,400万円を詐欺師が作ったネット口座に振り込んだ。

「詐欺師は、被害女性の名義でネット口座を開設しています。通常、高齢者が大金を振り込む際は銀行員が注意しますが、今回は自分名義の口座だから詐欺を疑わなかったのでしょう。知能犯の仕業ですね」(多田さん、以下同)

これまでも、マイナポイントの手続きや還付金の支払いなどにマイナンバーが必要とだまされ、電話やメールで聞き出される事件は数多くあった。だが、ビデオ通話の映像を用いた点、おそらく偽造マイナカードで口座開設した点などが新しい手口といえる。

今後、新たなマイナカード詐欺は起こるのだろうか。多田さんに、予想される詐欺の手口を教えてもらった。

「詐欺師は電話で話した内容やマイナカードから情報を盗み、それを基にお金を盗むのが目的です。(1)ネット銀行の口座開設や(3)カードローンなどは直接的ですが、(2)スマホの乗っ取りも怖い詐欺です」

スマホで銀行や証券会社などと取引する人は、情報が筒抜けになる危険性も。特に注意したい。

■暗証番号などの情報は絶対に教えてはいけない

「さまざまな手続きで、身分証明書の提示が求められます。これまでは偽造された運転免許証が使われましたが、今後は偽造マイナカードも増えるでしょう。詐欺師のターゲットとなる高齢者は運転免許証はないけれど、マイナカードは持っている人が多いからです」

さらに12月以降、従来の保険証が廃止され、マイナ保険証に一本化される。つまり、頻繁に通院する高齢者は、マイナカードを持ち歩いて使用する機会が増えるのだ。

「詐欺師にすると、だます口実が探しやすくなります。たとえば『地域の病院で個人情報の流出があった』などと言われると、通院している人はドキッとして、詐欺師の言葉を信じるでしょう」

加えて、カバンごとひったくりに遭ったり、紛失も考えられる。マイナカードには住所・氏名のほか誕生日の記載もある。キャッシュカードなどの暗証番号を誕生日に設定していたら、あっという間にお金を盗まれてしまうだろう。

マイナカード詐欺に遭わないためには、何に注意すればいい?

「まず、マイナカードは他人に見せない。警察官などと名乗っても、特に暗証番号などの個人情報は絶対に教えないことです」

マイナ保険証での病院受付は、自分で行うようにしよう。たとえ親切そうな人でも、マイナカードを預けてはいけない。

また、マイナカードと暗証番号があれば、誰でも本人になりすまし、個人情報の宝庫「マイナポータル」に侵入できる。マイナポータルには公金受け取りに指定した銀行口座の情報もあるので、悪用される恐れがある。マイナカードの管理は徹底したい。

「次に、マイナカードにかかわらず、詐欺師は電話での接触が多いので、詐欺電話の対策を」

着信時に「詐欺防止のため録音します」と警告アナウンスが流れ、自動録音が始まる詐欺対策電話機がおすすめだという。常に留守番設定にして、知人からの録音がある電話だけに掛け直す手もある。

「もっとも大切なのは『本物?』と疑問を持って確認することです」

警察官や公的機関の職員と名乗る人を信じてしまいがちだが、いったん電話を切って折り返そう。

「電話を切ったら子どもや近所の人に聞いてみて。あるいは#9110の警察相談専用電話、188の消費者ホットラインにご相談を」

クレジットカードなら盗難や紛失の連絡をすれば、すぐに止めてくれるが、マイナカードの即時停止が可能かは疑問だ。

国が便利だと喧伝するマイナカードは、実は隙だらけ。自分のカードやお金は自分で守るほかない。

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