がん患者2000人看取り、女性医師が語った“緩和ケア” 前向きな気持ち、いかに保つか「悩んでも転移するときはする」

「ガンと共生し、より豊かな人生を目指す緩和ケアが重要」と話す小林千佳さん=9日、戸田市

 埼玉県戸田市本町の戸田中央看護専門学校で9日、市民を対象の公開講座「がんと共に生きる―緩和ケアのお話」が開催された。戸田中央総合病院が主催。戸田中央総合病院の緩和医療科部長の医師小林千佳さん(62)が講師を務め、地域の高齢者など約100人に緩和ケアを通して患者を前向きな気持ちを保つことの大切さを説いた。

 小林さんは、女子医科大学で泌尿器科担当医師を長く務めた後、2005年から現職。「これまで19年間でがん患者2000人の看取(みと)りにかかわった」という小林さんの言葉に客席の人たちは熱心に耳を傾けていた。

 小林さんは「がんは日本人の死亡率で1位。2人に1人ががんになる。しかし最近は、がんと診断されながら元気に生きている人が増えている。今は、がんと共に生きる時代。がんと共生し、より豊かな人生を目指すために緩和ケアも重要になっている」と説いた。

 病気を治す治療と違い、緩和ケアはつらさを和らげ、患者と家族の不安や痛みを和らげることに力を入れる。患者や家族のさまざまな相談にのるために、医師や看護師のほか、社会福祉士や栄養士、心理カウンセラー、ボランティアなど多様な専門家がチームで緩和ケアを担う。

 「がんと上手に付き合えるようお手伝いするのも緩和ケア」と小林さん。「緩和ケアではがんと診断された患者が前向きの気持ちを保ち、積極的に生きることを支える。最後まで自分らしく生きられるように支援します」と締めくくった。

 講演の最後に会場からの質問に応じ、「緩和ケアを希望するタイミングは?」「滞在期間は?」などの質問が続いた。がんの転移について不安を訴えた質問に、「悩んでも転移はするときはする。ほかのこと、別のことを考えるのが一番いい」とアドバイスした。

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