中古物件の購入とリフォームを希望する場合、「不動産会社」と「リフォーム会社」との連携が必須となります。しかし、「双方の思惑は、必ずしも共通しているとは限らず、依頼者の要望が無視されてしまう状況にもなりうる」と、不動産コンサルタントの高橋正典氏は言います。日下部理絵氏、高橋正典氏、畑中学氏による著書『絶対に失敗しない! 中古マンションの見極め方』(ビジネス教育出版社)より、詳しく見ていきましょう。
「不動産購入」と「リフォーム」を同時に行なう問題点
頭でわかっていても、いざ目の前に親切な担当者がいると、どうしても信用してしまいがちだ。もちろん信用した結果、良い物件やリフォームに出会えることもある。決して全てがダメなわけではない。ここでは、事例と注意すべきポイントを見ていくことにしよう。
思惑の異なる「リフォーム会社」と「不動産会社」
一つ目は、物件探しを依頼する不動産会社と並行して、リフォーム会社を別に探したケースである。ある依頼者が都内城西地区に総予算4,500万円程で2LDKの物件を探していた。その方はインターネットで見つけたあるリフォーム会社さんから、
「不動産屋に行くと、4,500万円の予算目一杯の物件を紹介される。お客様の要望を叶えるにはリフォーム費用として1,000万円ほどかかるので、不動産屋には物件の予算は3,500万円と言ってください」といわれた。
不動産物件3,500万円+リフォーム費用1,000万円で総予算4,500万円という計算になる。
そういわれた依頼者は正直に不動産会社で予算を伝えた。しかし、その方の年収から不動産会社の担当者が計算すると5,000万円ほどは借りられることがわかり、やはり予算目一杯の素敵な物件を紹介されたという。実は、こういうパターンが最も多いのだ。双方がそれぞれのプロとして語る言葉に嘘はない。しかし、板挟みの消費者はもはやどちらが正しいかわからなくなってしまう。
このケースの重要なことは、あくまでも「物件購入」と「リフォーム」はセットであり、その意向についてそれぞれ関わる事業者が理解できていないことである。腕は良いが、思惑の異なるリフォーム会社と不動産会社の担当者のいうことを聞いていただけでは、理想の住まいは手に入らない。
[図表1]不動産会社とリフォーム会社を別々に探すと思惑が異なり、依頼者が混乱する 出所:『絶対に失敗しない! 中古マンションの見極め方』(ビジネス教育出版社)より抜粋
建物知識のない不動産会社を「窓口」にすると…
二つ目は、物件探しを依頼する不動産会社から紹介してもらったリフォーム会社のケースである。物件探しを依頼していた不動産会社の担当者はとても親切だった。スムーズに物件も見つかったタイミングで、「良いリフォーム屋さんを紹介します」といわれて、商談に入った。
この場合は、リフォーム会社はあくまでも不動産会社の下請け的なポジションになるので、前記のパターンに比べればスムーズに進むことになる。
物件の契約までに一度だけリフォーム会社と商談し「とりあえず住宅ローンの審査のために見積もりを出してもらいましょう」ということで見積もりを出してもらう。総予算が決まったところで物件の契約が完了した。
問題はここからだ。物件の契約が終わった日以降のリフォーム会社との打ち合わせには「私はリフォームの専門ではないので、直接話してもらった方がスムーズですから」と、不動産会社の営業担当者は一度も同席しなかった。打ち合わせを数回重ねていくうちにリフォーム担当者との相性も徐々に合わなくなり、(不動産会社の)営業担当者への不信感も相まって、
「すいませんが、別のリフォーム会社とも相談して良いですか?」と話した。
すると、その担当者からは、
「もちろん構いませんけど、物件の引渡しまでにはどこでやるか確定してもらわないと困りますので、気をつけてください」
そういわれ、慌てて数社に打ち合わせることになった。ところが、ここでリフォーム金額について、新たな相談先から、「こんな金額ではできません」と、驚きの言葉が帰ってくる。
最初に相談した不動産会社の営業担当者を通じて出てきた見積もりが約300万円だったが、他のリフォーム会社のいずれも500万円以下ではできないというのだ。どうやら、依頼者の要望を聞いて見積もった最初のリフォーム会社は間に入っていた営業担当者のいう通りに、最低限の金額で仕様や施工法を計画していたようだ。ただし、依頼者が本当に望むリフォームとは遠くかけ離れた内容だったのである。
このケースで重要なことは、一度の打ち合わせで伝えた要望で予算を組み立ててしまったこと、そして依頼者の要望を引き出すことよりも物件の契約が大事な不動産会社が取り仕切ったことにある。まさに建物の知識のない不動産会社を窓口としたデメリットが出てしまったケースといえる。
[図表2]不動産会社に紹介されたリフォーム会社 下請け的言動に注意が必要だった 出所:『絶対に失敗しない! 中古マンションの見極め方』(ビジネス教育出版社)より抜粋
「リフォーム」より「新築物件」を…と誘導されるケースも
そして、三つ目が「建設業免許」等の建物知識のある会社に依頼したケースである。とある不動産ポータルサイトに掲載されている、予算も手頃なマンションの問い合わせをした依頼者がいた。扱う不動産会社からその物件の内覧の手配をしてもらう。理想の住まいを自分たちで作りたいという思いを事前に伝えておき、内覧当日は複数の中古マンションを見学することになった。しかし、どの物件を見ても営業担当者からは「中古は何があるか不安ですからね」といったネガティブな話ばかりを聞かされた。
それでも気に入った物件があり、リフォームの相談をしたいと依頼することになった。「建設業免許」もあるのでスムーズに見積もりが提供されると思いきや、その営業担当者からは、
「打ち合わせが来週の週末。そこから見積もりに更に一週間くらいかかります。その間に他の物件も見ておきましょう」といわれた。
いわれるがまま、他の物件を見学することになったが、その物件は全て新築戸建で、予算を遥かに超える物件ばかりだった。
聞けば、それら新築戸建は全てその不動産会社の建てた分譲住宅だった。明らかに売りたい物件に誘導されていることがわかる。また、ようやく出てきたリフォームの見積もりも予算内には到底収まらなかった。
結局、この会社との商談は中止し、別の業者探しとなったわけだ。このケースでは「建設業免許」があったとしても、その不動産会社のメインが新築住宅の販売であったことが問題の始まりであった。
[図表3]建設業免許のある不動産会社 しかし見せられるのは新築物件ばかり・・・ 出所:『絶対に失敗しない! 中古マンションの見極め方』(ビジネス教育出版社)より抜粋
こうした会社でもリフォームを行う会社もあるが、まずは事例などを確認することがポイントだったといえる。特に、不動産会社との出会いは「物件」である場合が多いため、その会社がどんな会社か、についての確認がおろそかになるケースはとても多いようだ。「物件選び」は「会社選び」から始まるということを再認識したい事例である。
日下部 理絵
マンショントレンド評論家、住宅ジャーナリスト
高橋 正典
不動産コンサルタント
畑中 学
不動産コンサルタント、武蔵野不動産相談室株式会社代表取締役