三遠ネオフェニックス、苦しい5連敗は真の優勝候補に駆け上がる試練

地区首位独走も苦しい5連敗

中地区首位を走る三遠ネオフェニックスは今、足踏みを強いられている。

バイウィーク直前のアルバルク東京との第2戦(2月11日)から前節の横浜ビー・コルセアーズ戦まで4連敗。それ以前は連敗はおろか、38試合で4敗しかしていなかったチームにとっては、緊急事態だ。

負の連鎖から抜け出すためにも、ここで一つ白星がほしい──そんな思いで臨んだ第26節、アウェーでの川崎ブレイブサンダース戦だったが、結果は伴わなかった。この試合は金丸晃輔とコティ・クラークという主軸2人が欠場する苦しい状況だったとはいえ、1Q序盤から川崎にリズムよく3Pを射抜かれ、アグレッシブなディフェンスの前にターンオーバーからの速攻を何度も許した。

12点ビハインドで折り返した3Qには一時3点差(59-62)まで詰め寄ったものの、あと一本を決め切れず。その間に川崎は藤井祐眞がタフな3Pをねじ込み、流れるようなパスワークからこの試合が復帰戦となったジョーダン・ヒースも鮮やかに長距離砲を射抜いた。2本の3Pの直後にも三遠はターンオーバーを犯し、ニック・ファジーカスへのファウルを取られたところで大野篤史HCはたまらずタイムアウトを要求。流れを変えられないまま迎えた4Qには、速攻からロスコ・アレンにダンクをたたき込まれ、試合時間7分55秒を残して後半最後のタイムアウトを使わざるを得なくなった。

最終スコアは78-101。今季3度目の100失点越えでの完敗で、連敗は5に達してしまった。

「オフェンスもディフェンスもバランス良くプレーし続けることができなかったと思います。ケガ人も出て苦しい状況だからこそ、一つ一つのポゼッションを我慢強く戦っていかなきゃいけないのですが、どこかで焦りというか、自信がなさげなプレーが目立ったので、一つの集団としてしっかりまとまってゲームに臨まなければいけないと思います」

大野HCはそう試合を振り返った。

この試合に関していえば、本来三遠が目指すバスケットを川崎にやられたような試合展開だった。最大の武器である3Pでは川崎が14/31(45.2%)に対して三遠は6/29(20.7%)と、量も質も上回られた。また、ドライブを仕掛ければ相手の包囲網に捕まり、ファウルもなかなか鳴らない。変化を求めてディフェンスをゾーンに変えてもギャップを突かれて得点される。何をやってもうまくいかず、選手もコーチもフラストレーションが溜まる試合だったはずだ。

だが、大野HCは冷静だった。連敗が続いていることに対しては、「自信になりかけていたものが少し崩れてきている」と危機感を示しつつも、同時にこの連敗をステップアップの試練と捉えている様子だった。「苦しい状況で言い訳を探してコートに入るのか、それとも戦うための準備をしてコートに入るのか。もし結果が同じだったとしても、どっちの方が自分にとって得るものが大きいのか。苦しいときこそ、どうやって戦ったらいいかを突き詰めていくのが選手の成長であり、チームの成長です。次の試合は嫌でも来るので、グループになって戦おうと選手たちに話しました」

千葉ジェッツ時代にリーグ優勝するまでには5シーズンかかった。いくら調子が良くても一筋縄ではいかないし、好調もずっとは続かない。大野HCはそれを一番よく知っているのだ。

連敗にも前向きな大浦「1つの勝利が変わるきっかけになる」

選手も必ずしも現状を悲観しているわけではない。この試合で12得点を挙げた大浦颯太は「個人的には点は取れていますが、アシストが少ないと感じています。PGとして、今は周りをうまくプレーさせられていないのかなと思います」と、自身の課題を分析している。たしかに、シーズン平均4.7本のアシストは、特にここ2試合は共に僅か2本。チームとしてもシーズン平均1位の21.4本から連敗期間中は19.6本に減っている。

また、勝ち続けていたからこそ、ビハインドからのカムバックも課題の一つだと大浦は言う。

「今までは負けて追いかける展開がなかなかなくて、ずっと勝っている状況でした。でも、今日であれば10点差を付けられたところで我慢ができなかったり、追い付きかけたときに、もうひと踏ん張りができなかったです。5点差や3点差まではいくけど、そこから逆転したり、勢いに乗れるような力がまだないのかなと思います。そういう場面でチームとして切れてしまって、また離されてしまう。琉球戦もそうでしたし、今日もそうでした。そこは負けから学ばないといけないところであり、自分たちが強くなるために修正が必要なところだと思います」

この試合では、苦しい時間帯はヤンテ・メイテンのポストアップかサーディ・ラベナの強引なドライブに頼らざるを得ない状況となり、ボールと人が連動する三遠のバスケットは鳴りをひそめてしまった。だが逆に、3点差まで追い上げた時間帯はよくパスが回り、オープンの3Pや期待値の高いショットをセレクトできていた。

その流れをビハインドの展開で持続できるかは、大浦の言うように課題であり、同時にのび代でもある。今は苦しいかもしれないが、仮にチャンピオンシップで苦境に立たされたときに、ビハインドゲームの経験は必ず生きてくるはずだ。

今季は当たり前だった“勝つこと”が、今は当たり前ではなくなっている。だからこそ、次に1勝を挙げたとき、その価値は計り知れないほどに高いものになるだろう。「1つの勝利がチームが変わるきっかけになるとも思います。(ケガで)人がいないからと言い訳して戦っていては、本当の意味で優勝できるチームにはなれないです。まずは1つの勝利が必要かなと僕は思います」と大浦。

この試練を乗り越え、クラブ名のように不死鳥のごとく復活する姿を見せた時、三遠ネオフェニックスは真の優勝候補となれるはずだ。

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