バンクシーの「木」の壁画、白い塗料で汚される ロンドン北部

世界的な覆面芸術家、バンクシーがロンドン北部で描いた「木」の壁画が白い塗料で汚されているのが、20日見つかった。

この作品は、ロンドン北部フィンスベリー・パークの建物の壁に17日に出現した。緑色のペンキが吹き付けてあり、左下にはスプレーペンキの器具を手にして立つ人物が描かれている。壁の手前に立つ枝葉を落とされた木と合わせて眺めると、その木に緑の葉が豊かに生い茂っているように見える。

バンクシーは18日、この壁画は自分によるものだと認めた。

壁画は金属製フェンスで囲まれ、保護されていたが、20日朝までに白い塗料で汚された。

ロンドン北部のイズリントン行政区は監視カメラを設置し、作品を保護する別の方法を検討しているとしている。

広報担当者は、同行政区はこの作品を歓迎しており、「私たちは作品がこのまま残ることを強く望んでいる」と述べた。

また、「この作品は、樹木が私たちのコミュニティーで果たす重要な役割や、気候危機に取り組む上で果たす重要な役割を浮き彫りにする、実に力強い作品だ。それが汚されてしまい悲しい」と付け加えた。

同行政区は、壁画が初めて出現した際、「フェンスの設置や公園のパトロールなど、壁画を保護し、群衆を管理するための一時的な措置を講じるために迅速に動いた」と説明。

「誰もが作品を楽しめるようにするため」の「今後の解決策」について、建物の所有者と話し合いを行ったという。

地元住民でジャーナリストでもあるカルロス・セラーノ氏は、自分が暮らすアパートのすぐそばでバンクシーの作品が見つかってから、「クレイジーな日々」が始まったと語った。同氏の自宅の窓は、作品を保護するフェンスで囲まれたエリア内にある。

セラーノ氏は「これは本当にうれしいことだと感じている。新しい人々と知り合う機会になっているし、自分はこのコミュニティーの一員だと感じられる機会でもあるので」と、BBCロンドンに語った。

そして、「ここは私有地で、ここで私たちは暮らしている。私たちは自分たちのプライバシーを守りたい。それが重要なことだと私は思う。しかし同時に、みんながこのようなことを楽しむのも重要だ」と付け加えた。

「本当に残念」

地元住民のマット・マッケナ氏は20日朝、犬の散歩中に、壁画に白い塗料が塗られているのを見つけたと、BBCロンドンに語った。

「本当に残念。こういうことが一夜にして起きるなんて」とマッケナ氏は言った。「みんなが話題にするよりも前に、私のパートナーは17日に現れた作品を見ていて、結構気に入っていると言っていた」。

「大勢の人がこの作品のことを話題にしている。忘れられかけていたロンドンの一角での出来事のことを」

これまでのところ、白い塗料を塗った人物は特定されていない。

BBCのポッドキャスト「ザ・バンクシー・ストーリー」に出演したグラフィティー・アーティストのジョー・エプスティーン氏は、グラフィティー・アーティストはしばしば「縄張り争い」を繰り広げ、「互いの作品を排除し合う」ことがあると説明した。

バンクシーのこれまでの多くの作品と同様、最新作をめぐってもさまざまな意見が上がった。壁画の前にある桜の木は剪定(せんてい)され過ぎていると指摘する自然保護活動家もいた。

「ハリンゲイ・ツリー・プロテクターズ」のジオ・ロッツィ氏は、桜の木が「本当に、実に残酷に」刈り込まれていると指摘した。

「桜の木は、このような刈り込み方をされるとうまく育たない」

「本来は満開のはずなのに。3月なのだから」

行政区によると、壁画の前にある桜の木は樹齢40~50歳で、腐敗とかびによる損傷が進んでいる。そのため安全確保と樹齢延長のために木は世話されており、今後も木を生かすための手入れを続けるという。

剪定を担当した会社「トールズ・ツリーズ」の代表ローレンス=トール・スティーヴン氏は、樹木の上部を取り除く「ポラーディング」と呼ばれる「昔からある剪定方法」を用いたとしている。

同氏は「木の寿命を延ばすのにとても適した方法」で、「春には大きな成長」が見られることを期待していると述べた。

(英語記事 Banksy's urban tree artwork defaced with white paint

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