「母校の力になりたい」後輩球児の体と心ケア20年 八学光星野球部トレーナー・石藤寛之さん

後輩たちの治療に当たる石藤さん=2月下旬、八戸市

 第96回選抜高校野球大会(センバツ)に出場している八戸学院光星高校の野球部員を陰で支えているOBがいる。石藤寛之さん(41)は、コンディショニングトレーナーとして、約20年前から後輩たちの体と心をケアし続けてきた。8強入りを懸けて23日の2回戦に臨むナインへ「いつも(自分に)見せてくれている笑顔で、気負わずにプレーしてほしい」とエールを送る。

 八戸市出身の石藤さんは、同校野球部時代はベンチ入りがかなわず、応援団として仲間に声援を送ることがほとんどだった。「野球選手に携わりたい」との思いから新聞記者になることが夢だったが、高校2年の冬にテレビで見たトレーナーの仕事に感銘を受け、将来を決めた。

 卒業後の2001年、金沢成奉監督(当時)の紹介で大阪府の整骨院に弟子入り。専門学校にも通って知識を深め、はり師や、きゅう師、柔道整復師の資格を取得した。

 03年からは八学光星が甲子園に出場するたびに練習会場へ足を運び、失敗を繰り返しながらも懸命に選手のケアに当たった。11年9月には大阪市内で「いしふじ鍼灸(しんきゅう)整骨院」を開院。同院での施術にとどまらず、野球に励む地域の小・中学生を対象に、けがをしない体づくりを指導する活動にも力を入れた。

 ただ「大好きな母校の力になりたい」という思いが消えなかった。家族の理解を得て、同院の拠点を八戸市に移すことを決意。18年5月、同市白銀町で再スタートを切った。

 移転後は休診日を中心に同校を訪れ、けが予防や故障者の早期復帰のための手技治療とメンタルケアに当たっている。コンディショニングトレーナーとして、選手一人一人に合った治療や声がけをすることはもちろんだが、一番のモットーは自身が「ばかになること」。親元を離れ、レベルの高い環境で練習に打ち込む選手たちが「少しでも息抜きできたら」と、たわいもない話で笑顔を引き出しながら治療することを心がけている。石藤さんのサポートを受ける山田義惟(よしのぶ)投手(3年)は「とても優しくて、どんなことでも話しやすい」と語る。

 センバツでチームに同行している石藤さん。「日頃から努力する姿をそばで見てきた。みんなが甲子園で笑顔でプレーできるよう、しっかりサポートしていく」

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