ヴェトナム国家主席、就任1年で辞任 汚職めぐり交代相次ぐ

ジョナサン・ヘッド東南アジア特派員

ヴェトナムのヴォー・ヴァン・トゥオン国家主席が20日、就任からわずか1年で辞任した。

政府はこの日、与党・共産党との会合後に声明を発表。トゥオン氏について、党の規則に違反し、党の評判を損ねたとした。

トゥオン氏の地元では汚職スキャンダルが発覚しており、今回の辞任はそれに関連しているとみられている。

トゥオン氏は昨年、汚職事件で辞任に追い込まれた当時の国家主席の後任に任命された。

共産党指導部は、汚職の撲滅を優先課題に掲げている。

ヴェトナムでは、指導者の交代は通常、慎重に計画され演出される。

そのため、1年あまりで2人の国家主席がともに汚職問題で辞任することからは、経済が急成長しているヴェトナムで広がっている汚職への対処に、共産党が苦慮していることがうかがえる。

汚職撲滅運動が進むなか

ヴェトナムで国家主席は、政治の頂点に立つ「4本の柱」の一つ。最も力が大きいのは共産党書記長だが、国家主席もかなりの権限をもつ。残りの「2本」は首相と国会議長。

トゥオン氏は国家主席に選ばれた際、有能で比較的若く、汚職撲滅運動を率いるグエン・フー・チョン共産党書記長の弟子という利点もあるとされた。

しかし結局は、前任のグエン・スアン・フック氏と同様、地元のスキャンダルをめぐって辞任に追い込まれた。ただ政府は、共産党のイメージを傷つけたという、分かりにくい説明しかしていない。

辞任には、21日に開かれる国会での正式な承認が必要。

警察は数日前、中部クアンガイ省の元幹部を汚職の疑いで逮捕したと発表した。元幹部は、トゥオン氏が同省で党トップを務めていた時の部下だった。

ヴェトナムでは、高官や財界人が汚職疑惑で職を失ったり、投獄されたりする事案が相次いでいる。

有数の資産をもつ不動産王の1人は現在、同国史上最大の120億ドル規模の銀行詐欺事件をめぐって裁判を受けており、死刑判決が言い渡される可能性がある。

反汚職運動がこの先どこまで進行するのかは不透明だ。党の評判や指導層がダメージを受け、外国人投資家の信頼を落とす恐れがある。そうした信頼は、ヴェトナムが目覚ましい経済成長の維持のために頼りにしている。

(英語記事 Vietnam: President Vo Van Thuong resigns after a year in office

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