社説:非正規公務員 現場の実情を踏まえてこそ

 職員の立場が不安定では公共サービスの足元が揺らぐ。改善を急ぐ必要がある。

 自治体や一部事務組合で働く非正規職員が増えている。2023年4月時点で約74万2千人と過去最多を更新し、前回調査の20年に比べ6.9%増えた。人数にして約4万8千人増である。

 正規職員は横ばいの約280万人で推移しており、非正規は職員全体の5人に1人を占めている。05年の8人に1人から大幅に広がった。非正規への置き換えや民間への業務委託も進んでいる。

 非正規職員の多くは20年度に導入された会計年度任用職員として採用されている。自治体ごとに異なっていた非正規職員の採用形態を統一し、賞与や退職金の支払いも可能になった。

 一方で、自治体などの8割が継続雇用を事実上制限する「公募基準」を設け、以前より雇用が不安定になっている。そんな実情が総務省の集計で浮かび上がった。

 会計年度任用職員の任期は1年以内で、自治体の裁量で再雇用できる。だが、公募基準で3回目以降に公募試験を課す自治体が少なくない。

 新しい人に働く機会を提供する意味合いがあるが、機械的に新規応募者を採用する傾向も指摘されている。

 そのために実績や経験を積んだ人が働き続けられず、雇い止めを誘発する原因になっているとされる。

 雇用や地位の安定化を目的に導入された制度なのに、これでは本末転倒ではないか。

 貧困家庭や家庭内暴力(DV)被害者の相談など、比較的新しい行政サービス分野では、多くの自治体で資格や専門知識を持つ非正規職員が担っている。

 深刻なのは、短期間で雇い止めを繰り返すことで、こうした職員の専門的な知識や経験、人的なネットワークが蓄積されず、住民サービスの低下になりかねないことだ。

 賃金面でも低水準が目立つ。京都自治労連が府内の会計年度職員を対象にした昨年公表の調査結果では、正規職員と同じ仕事をしている職員や専門職でも3割が年収200万円未満と答えている。

 不安定な立場にはハラスメントが入り込む危険性も高い。非正規職員や研究者らでつくる「公務非正規女性全国ネットワーク」のアンケート調査には「雇い止めが怖くて、正規職員の嫌がらせに抗議も相談もできない」といった声が寄せられているという。

 民間大手などが人材確保を競い合う中、公務職場の低い処遇は公共サービスの担い手不足も招きかねない。

 専門性や経験を正当に評価して、正規職員に採用する仕組みを広げる必要があるのではないか。それが住民の利益にもつながるはずだ。

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