【専門医が解説】女性の片頭痛の治し方、簡単な予防体操 市販薬に頼らなくても症状改善可能

写真を拡大 片頭痛チェック表
写真を拡大 【頭痛体操】腕を振る体操の動き1
写真を拡大 【頭痛体操】腕を振る体操の動き2
写真を拡大 【頭痛体操】肩を回す体操の動き1
写真を拡大 【頭痛体操】肩を回す体操の動き2

 日本人の10人に1人程度が持つとされる片頭痛は、急に激しい痛みに襲われ、仕事や日常生活にも大きな影響を及ぼす。女性ホルモンと関係しているといわれ、特に20~40代の女性に多い。福井県内唯一の女性の頭痛専門医の早瀬史子・福井赤十字病院神経内科副部長は、市販薬頼みで病院を受診していない人が多いと指摘し、「治療を適切に受ければ頭痛のない生活を手に入れられる可能性がある」と話す。

市販薬使い過ぎ注意

 片頭痛は、頭蓋内・硬膜血管にある神経が何らかの刺激を受けると、神経伝達物質が放出されて血管が拡張、炎症が起こって痛みが生じるとされる。症状の特徴は▽ズキンズキンと脈打つような痛み▽頭を動かすと痛みが増す▽吐き気がある▽光や音、臭いに敏感になり痛みが増す―など。痛みは4~72時間程度続く。片側だけでなく、両側が痛むケースもある。

 早瀬医師によると、睡眠不足やストレスなどが引き金となって起こるほか、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が減少する月経前や排卵日周辺は起こりやすい。早いと月経が始まった後の小学校高学年から症状が出る人もいるという。

 ドラッグストアなどで痛み止めを購入できるが、使用頻度が増えると使い過ぎによる頭痛が起こり、症状が悪化するという。「市販の痛み止めを飲む回数が増えているのは重症化しているサイン」と早瀬医師。服用する日が1カ月で10日以上だと使い過ぎだとした。

 また「妊娠中や授乳中は薬の服用を控えて」と訴える。妊娠中はエストロゲンが増えて片頭痛が起こりにくくなるが、どうしてもつらい時は「自分で判断せず、産婦人科医や頭痛専門医に相談してほしい」と話した。

⇒片頭痛治療の原因物質に直接作用する新薬が発売…効果は 神経外科医に聞く実績や投与の対象

専門医に相談を

 基本的な治療は、痛い時に飲む急性期治療薬や、1カ月の頭痛日数を減らして程度を改善する目的で使う予防薬を服用する。急性期治療薬は、抗炎症、鎮痛、解熱作用のある薬や、神経からの痛み物質の放出を抑えるトリプタンという片頭痛に効果的な痛み止めを使う。薬の使い過ぎによる頭痛がある場合は、まずその頭痛を改善することから始める。

 予防療法では、2021年から片頭痛治療に特化し、原因物質に直接作用する抗体医薬が保険適用で使えるようになった。月に1回皮下注射で投与し、少なくとも3カ月以上続ける。早瀬医師によると、投与した人の8~9割で効果があり、中には片頭痛が起こらなくなった人もいた。投与できるのは重度の患者に限られている。

 また、治療を進めていく上で役立つのが「頭痛ダイアリー」。頭痛が起こった日に痛みの程度や頻度、薬の効果、考えられる原因などを記入する。どのような時に頭痛が起こるのかを観察でき、治療をスムーズに進められるという。日本頭痛学会のホームページからダウンロードできる。

 痛みが無い時には、適度な運動をするといいと早瀬医師。デスクワークの合間や休憩中に「頭痛体操」を行うと頭痛が起こりにくくなるという。痛みがある時に入浴すると血管が広がって悪化する可能性があるので避けるようにする。

 早瀬医師は「どうせ治らないと諦めないでほしい。片頭痛で生活に支障が出るなど悩んでいる人は一度専門医に相談してほしい」と呼びかけていた。

【頭痛体操】腕を振る体操

(1)肘を曲げ、両腕を肩の位置まで水平に上げる

(2)正面を向いたまま、頭は動かさずに、こまを回すように腕を左右にリズミカルに振る。この動きを約2分間続ける。

【頭痛体操】肩を回す体操

(1)足を肩幅くらいに開き、ひじを軽く曲げ、握り拳をつくった両手を鎖骨の前あたりまで上げる。

(2)リュックサックを背負うような感覚で両肩を前に回す。次に、洋服を脱ぐような感覚で両肩を後ろに回す。前後それぞれ6回ずつ回す。

注意点

 片頭痛や激しい頭痛、発熱を伴う頭痛がある時は行わない。体操中に痛みが激しくなった場合は、すぐにやめる。

© 株式会社福井新聞社