主催者推薦で実戦復帰した元女王ハレップ、戦友からの異議に強く反論!「私は何も間違ったことはしていない」<SMASH>

ドーピング違反による資格停止処分が4年間から9カ月に軽減された女子テニス元世界1位のシモナ・ハレップ(ルーマニア/32歳)が、現在開催中の「マイアミ・オープン」(3月19日~31日/アメリカ・マイアミ/ハードコート/WTA1000)で復帰を果たした。それについてやはり元1位のキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク/現129位)が記者会見で触れ、ハレップのワイルドカード(WC・主催者推薦)での出場に異を唱えたことが波紋を呼んでいる。

2022年全米オープンでの禁止物質「ロキサデュスタット」の検出と、「生体パスポート」に関わる違反で4年間の出場停止処分を受けたハレップは、今年2月にスポーツ仲裁裁判所(CAS)の審理で勝訴。この結果、資格停止期間が22年10月7日~23年7月6日に短縮され、即時復帰が認められた。

その直後にマイアミOPのWCを獲得したハレップは、現地19日の1回戦で約1年7カ月ぶりに実戦に復帰。元世界2位のパウラ・バドサ(スペイン/現80位)に6-1、4-6、3-6で敗れたものの、ブランク明けとは思えない力強いプレーを見せた。「今日は特別な日だった」と、数々の苦難を経てカムバックを遂げたことを喜んだハレップ。「観客が応援してくれてうれしかった」と、復帰を温かく受け入れてくれた人々への謝意も伝えた。

だが感慨に浸る女王を待っていたのは戦友からの思わぬ言葉だった。「彼女にはWCを与えるべきではなかった」――そう言い放ったのは18年全豪決勝でハレップとの死闘の末に四大大会初優勝を遂げたウォズニアッキだ。会見では「私はシモナのことが好きで良い関係を築いてきたけど...」と複雑な感情を覗かせつつ、率直な意見を述べた。
「私はドーピングの問題に対する自分の考えには常に正直なつもり。私は全ての人にとってクリーンで公平なスポーツを望んでいる。これはシモナに直接言う話ではないけど、誰かが故意に不正行為をした場合やドーピング違反を犯した場合は簡単に復帰させるべきではないと思う。

大会側がスター選手を招待したいのはわかるけど、それは私の考えとは異なる。誰かを非難したいわけではなく、そのような出来事が起こった後には、その選手にWCを与えるべきではないと思う。一番下から這い上がってくるべきというのが、私の個人的な意見よ」

これを会見中に伝え聞いたハレップは「私は何も間違ったことはしていないし、ドーピング違反もしていない。汚染されたサプリメントが原因だっただけで、違反ではなかったというCASの決定を読んだ方が良い」とすかさず反論。改めて「私にWCを与え、このような大きな舞台でプレーするチャンスを与えてくれた大会側に感謝している。戻ってこられて本当に良かった」と感謝の言葉を口にした。

そして「私に否定的な人が1人いるというのは、それほど重要なことではない。私には愛を与えてくれる人がごまんといるのだから、私はそれを受け入れるわ」と気を取り直した。

ウォズニアッキと言えば17年4月にドーピング違反による出場停止から復帰したマリア・シャラポワ(ロシア/元1位)が、同年の全米で全試合をセンターコートでプレーした“特別待遇”を強く批判したことがあるが、その時から彼女の考えは全くブレていないということだろう。同じような意見を持つ選手はいるかもしれないが、減刑と復帰を認められた以上は、ハレップには悔いのない復活ロードを歩んでもらいたい。

文●中村光佑

© 日本スポーツ企画出版社