飲食店経営はなぜ難しいのか、実際に足を運んで知ろう!

【外食業界のリアル・7】 カフェオーナーになって世界中で店舗を増やしていく経営シミュレーションがスマホで人気だ。だが、実際にゲームをやってみると飲食店経営でやらなければいけないことが多く手が回らないし、すぐに資金が底をついてしまったり、トラブルが発生したり、とチェーン店展開することの難しさが痛感できる。今回は、飲食店経営がなぜ大変で難しいのかについて語りたいと思う。

人手不足と求められる「店長力」

飲食店のオペレーションは、アルバイト・パート主体で成り立っているのが実情だ。正社員は店長だけ、ということも多い。一方、店舗でもDXが急激に進み、業務の中でモバイルオーダーの仕様を覚えなくてはいけないなど、スタッフに求められるネットリテラシーも高まっている。仮にスタッフができない場合は、店長がやらざるを得ない。

また、スタッフの有効求人倍率も高まり、求人コスト・時給も高騰している。そのため、店舗では慢性的に人手不足が続いており、店長がやらなくてはいけないことが増え続けているといえる。

店舗の接客や調理などのオペレーションやマネジメントの質は、店長によって左右されるといっても過言ではない。特にスタッフの管理や育成は難しく、世の中的には「店長力」という言葉でも表現されていたりする。スタッフに覚えてもらうオペレーションは多岐に渡り、共通項はあるもの企業ごと店舗ごとにローカルルールがあるのが常だ。

新店オープン時には、かなりの時間をスタッフの研修に充てることが多い。その中心となるのは店長だ。客の入りを予想してシフトを組むが、予想が外れることもある。そんなとき、「店長力」の高い店であるとスタッフが駆けつけてくれることもあったりする。店舗を運営するチームとして動いてくれるスタッフをいかに育てられるか、その如何によってオペレーションの質と店長の負荷は大きく異なるのである。

季節ごとのメニュー開発と仕入れ

飲食店では、チェーン店から個店まで季節ごとにメニューを展開することが一般的だ。グランドメニューと呼ばれる通年の定番商品とは別に、四半期ごとに旬の野菜や魚、季節を意識した料理やコースを出すことが欠かせない。それらを目当てに店舗に足を運ぶ客も少なくない。

新メニューについては専門のスタッフや料理長などによる商品開発によって生み出されるが、試食会など複数回のレビューが必要となることが多い。会社によっては、社長がOKを出さないと客に提供できないほど質にこだわることも珍しくはない。もちろん、仕入れや原価のことを考えなくてはならない。いくらおいしくても利益を出せないのであれば提供できないし、店舗数が多いチェーン店であれば各店舗に期間中提供できるだけの食材を確保できることが必須となる。

料理の品質について、企業は各店舗で均一の味を提供するためのマニュアルやフローなどの整備が必要になってくる。チェーン店によっては店舗ごとに一定の裁量を許容し、自由にやらせることもある。料理によってはスタッフの誰もが調理できるわけではないので、考慮が必要だ。

余談になるが、炭火焼は扱いが難しいといわれている。炭の火は不安定でガスのように一定の火力で焼けるわけではないため、きちんと仕上げるのが難しい。炭焼きの魅力は外がカリっと中がジューシーに仕上げられ、炭の風味も相まっておいしいことだ。そのためガスである程度焼いてから、仕上げだけ炭火でやるお店もあるぐらいだ。

SNS時代の店舗運営

グルメ媒体や検索エンジンの口コミ、SNSの投稿内容によって飲食店の集客が大きく変わる時代だ。グルメ媒体で高評価を得ていれば、特別な施策をしなくても安定的な集客が見込める。反対に低評価の場合、ネットで情報収集をしている層の獲得は難しく、それ以外の経路での獲得が必要になってくる。一般的に人は、ポジティブなことよりもネガティブなことを書き込むパワーの方が強い。何かトラブルがあったり、不満なことがあるとすぐに晒されたりする。口コミについては料理や接客についてのものが多く、店舗のオペレーションの重要性が増しているともいえる。

店舗運営でやらなくてはいけないことはこれら以外にもたくさんあるし、経験や知識が問われることも多々ある。だが、かといって飲食店経営は苦痛だけかというとそうではなくて、魅力もふんだんにある。「店を繁盛店にする」「スタッフの成長がうれしい」「お客様の喜びの声が好き」など、それぞれの楽しさがあるのも事実だ。

飲食店経営の難しさと大変さを分かった上で、実際に飲食店へ足を運んでオペレーションやスタッフの動きなどを見て欲しい。きっとこれまでと違った気づきがあるはずだ。(イデア・レコード・左川裕規)

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