20周年のザ・ギース「単独ライブは芸人として一番大事な根本」

今年で結成20周年を迎えるコント師、ザ・ギース。2006年から毎年、複数公演を行なっている単独ライブが今年も開催。これまで4回も『キングオブコント』決勝進出を経験している実力者は芸歴を重ねた今、コントそして単独ライブの楽しさをさらに実感しているようだ。

インタビュー中もそれぞれ質問に答えつつも、時に二人で笑い合い確認しながら、独特なペースで話す姿が印象的だった。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2024年4月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

時代が変わったことも意識しつつのネタ作り

――毎年恒例となっている単独ライブが、今年も8公演開催されますね。

高佐 最初に単独ライブをやったのが2006年で。

尾関 今年でコンビ結成20周年ですから、長いことやってますよ。もう18年やってるのか……怖いな。

――タイトルにはどんな思いが込められているのですか?

高佐 昨年は『neu(ノイ)』ってドイツ語で。今年も文章にするよりも単語にしようということで、イタリア語で『Venti』に。

尾関 大きいっていう意味ですね。

高佐 あとで調べたら“20”っていう意味もあるらしいってことがわかりました。けど、毎回タイトルと内容につながりがあるということはなく。

尾関 これだからこうしようとか、あれも要素に入れられるよね、みたいな話はするけどね?

高佐 うん。まぁ、タイトルが決まってからコントを作っていく感じです。いつも今くらいの時期(取材は2月上旬)から、回数はそこまで頻繁じゃないですけどネタの話を始めて、本腰を入れるのは開催2か月前くらいですかね。

尾関 最近、1か月前とか2週間前くらいには全てのネタを揃えられるようになってきました。それまでは1週間前に1本、2本ネタが足りないとか。

高佐 前日までない、とかもあったよね? けど、今年で20周年ですから。そんな若手みたいなことはしなくなりました。

――ネタはどのように作られるんですか?

尾関 作家と3人で作っています。タネを持ち寄って、話しながらできたものから、それぞれが書いてっていう感じですね。

高佐 手分けして(台本は)書きます。一見、時間はかかりそうですけど、僕らにとっては一番効率が良い方法なんです。まぁ、でも今年はタネもないに等しいです。

尾関 僕はストックしているもので、これいけるかもっていうのがちょっとだけありますね。

――まさに、これからですね。芸歴を重ねるなかで、ネタのテーマや題材は変化していますか?

尾関 今までやってしまった設定――わかりやすく言うと取調べのネタとかは、やってしまっているからやりづらいというか。シチュエーション自体も新しくしなきゃいけないと思っているのかもしれない。基本に立ち返って、わかりやすい設定でのスタートはあまりなくなった気がします。

高佐 時代も変わりましたからね。昔は面白いと思っていたものでも、今は危ないかなとか考えたりして。意識してもいますし、無意識でも(面白いと思うことが)変わってきてるとは思います。あと、芸人さんが増えているし、今はネットにネタ動画もすぐアップできるじゃないですか。

だから、(設定などが)カブる場合も多くなるというか。全員のネタを見て、ここは外そうとかやれればいいのかもしれないけど、そんな時間はないし。その辺にもどかしさを感じることもありますね。

単独ライブ中にアキレス腱断裂……

――毎年、複数公演されていますけど、最初から決め打ちでやっているのですか? それともライブごとに変化していくのですか?

高佐 変わっていくっちゃあ変わっていくよね? 日替わりのギャグコーナーみたいなものがあるんですけど、そこは毎回違いますし、普通のコントもブラッシュアップしていったり。過去には、1つのコントが丸々なくなったりすることもありました。あと昔、尾関がアキレス腱を切ったことがあって、次の日から構成を変えたこともありました。

尾関 アキレス腱が切れたその日のライブは、切れてからも全部やりきりました。10本中2本目くらいのコント中に切れてしまって。

高佐 いや、違うでしょ。8本中5本目くらいです。すげぇ頑張った感出してるけど盛り過ぎです! 僕は気づかなかったんですけど、一番うしろの席で見てた事務所の当時の社長が“尾関、アキレス腱切れたな”ってすぐ気づいて。

尾関 タクシーを呼んでくれて、終わってすぐ病院へ行けました。まぁ、それもいい思い出ですよ。

高佐 ポジティブだなぁ! あと、コントとコントの合間、青い照明のなかで次の衣裳に着替えて板に付いてコントを始めるっていうのを、10年前くらいからやってるんです。

――幕間はVTRでつなぐ芸人さんも多い印象ですけど。

高佐 そうですね。だから、VTRを作らなくてもいいんですけど、出ずっぱりになるので年々大変というか。如実に体力がなくなって疲れやすくなってるので、90分間、完走できるのかって不安があります。尾関はなんかやってる? 普段からジムに行ったりしてるのか。

尾関 そうだね。あと、よく寝てよく食べて元気に家族と過ごしてる。ストレスがないのが一番なのかもね。

高佐 僕、昨年は単独の3か月くらい前からプールに行ったり走ったりしてたので、肺活量が大きくなったんです。けど、やり過ぎて免疫力が下がったのか、風邪を引いてしまって。だから、適度にやらないとですね。

――単独で披露するネタは、賞レースも意識して作られるんですか。

高佐 いえ、できてやってみてから、これはいけるかもねっていう感じです。

尾関 ウケても賞レース向きではなかったり、我々が思ってなくても周りから「このネタいけるよ」って言われて、賞レースでやることもありますからね。単独をやり続けているのはいろんな理由があるんですけど、芸人として一番大事な根本だから。単独をしなくなったらネタも作らなくなるだろうし、芸人としての維持もできなくなるんじゃないかと思うんです。

実際、テレビで売れている以外の理由で単独をしなくなった人って、芸人としてのパワーがなくなったり、動きがなくなったりしてるなと感じることが多いですしね。

高佐 あとはまぁ、単純に楽しいからっていうのが大きいですね。今でこそ5月に単独をやるようになりましたけど、以前は9か月くらいに1回のペースで、不定期に7月だったり翌年は1月だったりとか、固定せずにやってたんです。

けど、いつもお世話になっている舞台監督さんから「固定したほうがお客さんも来やすいし、ライブとしても大きくなっていきやすいよ」とアドバイスをいただいて。だから、昨年の単独が終わってすぐ、同じ劇場の同じ時期を今年も押さえてもらいました。

尾関 単独をやり続けられるのって、我々だけじゃなく周りの人が手伝ってくれないと成り立たないじゃないですか。やり続けていると、そういう人たちと一緒に動いていけるというか、全体的なものを維持できるんですよね。

高佐 ありがたいよね、毎年やらせてもらえるだけでも。「やりたい」と言っても「ダメだ」と言われてる人もいるかもしれないもんね。事務所がライブに力を入れてくれてもいるし、20年経っても応援してくれてる感じがあるのも大きいかもしれないですね。

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