二宮和也は日曜劇場と相性抜群 『ブラックペアン』S2では“優しさ”も発揮される?

2018年4月期に放送されたTBS日曜劇場『ブラックペアン』の待望の続編、『ブラックペアン シーズン2』が7月期の日曜劇場で放送されることが決定した。主演は、前作に引き続き二宮和也が務める。

本作は、累計発行部数160万部を突破している海堂尊の“バブル3部作”と呼ばれる小説『ブラックペアン』シリーズを原作とした医療ドラマ。

シーズン1で二宮が演じていたのは、天才的な技量を持つ外科医の渡海征司郎。論文を書かないため、勤めている大学病院内での立場は一般医局員だが、その技術の高さは誰もが認めるもの。主に助手として手術に参加するが、難易度の高い手術では執刀医に代わってメスを握っている。

主人公に情熱があり、周りを巻き込んで目的を達成していくストーリーが多く見られる日曜劇場の中では、渡海はやや異質で、ダークヒーローといえるだろう。「腕の良い医者は何をやってもいい」と考えており、助手として参加した手術で、執刀医が失敗した際、その挽回を請け負う代わりに、辞表を提出させ退職金を巻き上げて辞めさせているのだ。そのため、周囲からは「患者を生かすが、医者を殺す医者」と噂されている。

二宮にブラックな側面のある人物を演じさせたら、最高が約束されたようなものだ。細かい仕草にまでその“黒さ”がしっかり表現される。前作の『ブラックペアン』でもそれが見られるところがある。手術に失敗した医師から紙袋に入った金を受け取る時、最後の最後で渡すことを渋る医師から、渡海は紙袋を奪い取るのだ。捨て台詞とニヒルな笑みを添えることも忘れない。嫌な奴なのだが、そのままでは死ぬだけだった患者を救っているし、文句を言うことはできない。しかもその姿がカッコよくも見えるので嫌いになれないのである。

さらに、どのような作品でも綿密な役作りをする二宮と、人と人との関係性が濃密に描かれる日曜劇場との相性は抜群だ。

事前予告なしにサプライズ出演した『VIVANT』(2023年)では、テロ組織「テント」のNo.2で、リーダーのベキ(役所広司)から厚い信頼を寄せられるノコルを演じた。ベキとノコルは親子だが、実は血は繋がっていない。はじめの頃はノコルもそれを重要なことと考えていないようだったが、別班の工作員・乃木(堺雅人)がテントに現れてから、その心境に変化が訪れる。組織を束ねる者として、時には厳しく、冷徹なところを見せながら、内心では尊敬するベキに言葉にしがたい特別な思いを抱え、揺れ動いていたノコル。二宮はその微妙な変化を見事に演じてみせた。

『ブラックペアン』のような医療ドラマは、ただ優秀な医師が患者の命を救うところが描かれるのではない。いろいろな人の思惑が交差して、不必要に命が危険にさらされてしまったり、命に優先順位をつけなければならなかったりすることがある。そんな場面で、二宮はどのような演技を見せるのか。今からとても楽しみである。

二宮は「6年ぶりにこの作品と再会することになりました。二宮もこの6年間で色んな経験をさせてもらい、その全てをぶつけて挑みたいと思います」とコメントを寄せている。

二宮は『ブラックペアン』出演からの6年間で『マイファミリー』(2022年)で父親役に挑戦したり、映画『TANG タング』(2022年)でロボットのタングと心を通わせたり、これまでにない役柄を演じてきた。先ほど触れた『VIVANT』のノコル役も含めて考えると、「あたたかい幸せ」を感じさせるような役を演じることが増えたように思う。今回の役柄に二宮の6年間の変化がどのように反映されるのか。放送を心待ちにしている。

(文=久保田ひかる)

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