世界各国で大ヒット中『デューン 砂の惑星PART2』初登場5位の衝撃とIMAX問題

3月第3週の動員ランキングは、人気YouTube動画、及び書籍化もされてベストセラーとなっている『変な家』を石川淳一監督が実写映画化した『変な家』が、オープニング3日間で動員34万4000人、興収4億7400万円を記録して初登場1位。間宮祥太朗、佐藤二朗、川栄李奈といったメインキャストは近年ヒット作に多く出演しているものの、本作の好成績に関しては、実写映画において若い観客層の新しいニーズを掘り起こすことに成功した企画の勝利というべきだろう。

衝撃的だったのは、世界各国で今年最大のヒットを記録中、前作の約2倍のペースで興収を積み上げている『デューン 砂の惑星PART2』の初登場5位という結果だ。同作のオープニング3日間の興収は1億9700万円、前週末にIMAXやドルビーシネマといったラージフォーマット・スクリーンでおこなわれた先行上映分を合わせても2億4900万円という成績。アカデミー賞効果によるランキング再浮上とはいえ、4ヶ月以上前に公開された『ゴジラ-1.0』にまで週末成績で後塵を排することとなった。

もっとも、『デューン 砂の惑星PART2』に関しては公開前から、映画ファンの期待がラージフォーマットでの上映、特にIMAXでの上映に偏りすぎていたことが指摘されていた。それは作品の性質上、さらに続編である今作の場合は前作の鑑賞経験上、ある程度仕方がないことで、同じような問題は海外でも公開前に指摘されていた。しかし、同時代の若手人気俳優たちが勢揃いしたスター映画としての需要も大きかった海外と比べて、熱心な映画ファンが観客の中心層となった日本では、危惧されていた以上に通常スクリーンの動員と落差が出てしまった。北米の映画メディアDeadlineのニュースによると、日本のオープニング成績の約半分をIMAXのスクリーンが占めていたという。(※)

この問題を根本的に解決するためには、日本全国、とりわけ各地方都市のシネコンにおいてIMAXスクリーンを増設するしかないわけだが、IMAXのデジタルフォーマットで制作された『デューン 砂の惑星PART2』や、全編がIMAXフィルム、及びラージフォーマットモノクロフィルムで撮影された今月末公開の『オッペンハイマー』のように、「IMAXマスト案件」の作品が年間を通じて配給されるわけではない(デジタルフォーマット化の普及によって、ハリウッド映画では今後増加していく傾向にはあるが)。そもそも、それだけの設備投資をする経営面での体力が、現在のシネコンチェーン各社にどれだけ残されているか。そして、興行全体における外国映画のシェアが大きく減り続けている現在、経営判断としてそれが正解なのか。頭を抱えてしまうことばかりだ。

参照
※ https://deadline.com/2024/03/dune-part-two-milestone-kung-fu-panda-china-global-international-box-office-1235860696

(文=宇野維正)

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